パリの美術館っていえば、一番に思い出すのが、ルーヴル美術館っていう人も多いと思います。いつもいつも観光客でいっぱいで、週末にはとっても長い列がのびてる、パリの観光名所。私はというと、実はまだモナリザ、観たことがありません。毎月第一日曜日に国立の美術館が無料になる日に、ルーヴル美術館に行ったことがあるけど、あまりにも敷地が広く、あまりにも人の数が多くて、少し観ただけで全部回るのを諦めて、それ以来は行ってません。忍耐力と体力が必要な美術館だと思います。
そんなルーヴル美術館の分館が、昨年の12月にランスにできたことは、ちょっとした話題になってました。しかもその設計を手がけたのは、妹島和世さんと西島立衛さんの建築家ユニットSANAAということで、日本でもニュースになっていたと思うので、知ってる方もたくさんいるはず。オープンしてから1年間は常設展がいつ行っても無料、ということで週末に遊びに行ってきました。ポンピドゥー・センターのメッツにある分館も、建築家坂茂さんの設計で、パリの大きな美術館の別館を両方とも日本人建築家が手がけてるというのは、すごいことですよね!
ランスという街は、パリから特急列車TGVで1時間のところに位置する、炭鉱で栄えた都市です。駅からはシャトルバスも出てますが、看板の道順に従って森の中を通って歩いていけば15分くらいですぐ着きます。それにバスで行くより、森を抜けて行く方が、面白いかもしれません。ガラス張りのキラキラ光る建物は、外からではなかなか全体像がつかみにくく、周りを住宅地が囲む炭鉱跡地に美術館が自然にとけ込んでる様子をより感じることができる気がします。
常設展しか行ってないのですが、この展示室に入る瞬間はどきどきしてしまいました。これまでどこの美術館でも体験したことのない、不思議な感覚を味わいました。人はある程度いて、話もしてるのにとっても静か。まるで空気の綿に覆われて、宙にふわっと浮いて足がすくみ、海の中に沈んで耳が聞こえなくなってしまったかのようでした。壁が真っ白ではなく、完全に反射する鏡でもなく、曖昧にぼんやり映り込む、磨かれた特別なアルミのような金属で、位置感覚を狂わされてしまいます。美術館として、作品を持つことはしなく、展示は1年ごとに2割程度入れ替えを行いながら5年間、「時」をテーマにして美術品をパリのルーヴルから借りて展示してます。パリでは古代エジプト、ギリシャ・ローマ、オリエント、フランス絵画、などなどと展示室が分野ごとに分けられていますが、ランスでは、この広い展示室に紀元前3500年から19世紀まで年代順に分野を超えて展示されて、同じ年代の中で見比べながら鑑賞できるのが面白いです。すぐ上の写真の左上に見えてるように、壁の上の方に年代が書かれていて、今どの時代にいるのかが分かります。ここでは世界中から美術を集めていて、ひとつの場所で大まかな時代の流れを知ることができます。
ガラス張りの一階と地下の建物でSANAAの設計した美術館、というとどうしても金沢21世紀美術館が頭から離れません。金沢の場合は、円形の建物の中に、四角い展示室が配置されているのに対して、ランスは真逆。外観は四角い長細い建物で、中に入ってみると全体的に曲線で、大きな展示室以外は、受付やショップ、図書室、地下へ降りる階段までも全部円い形をしていました。お庭も水玉のようなかわいさ!
お昼はぜひ、離れにあるレストランへ!とってもおいしかったです!!
電車の時間まで少しあったので、せっかくだから、街も探索しようと行ってみたのですが、美術館を盛り上げようとか、お客さんをお店に呼び込もうとかっていう意識がなさそうなところに驚きました。フランス政府がランスに美術館を建てようと決めたのは、美術館がなく、社会的、経済的理由で美術から遠ざかってる人たちのいる都市がランスだったようです。美術や建築に興味がある人たちは、美術館がどこにあっても世界中からやってくるだろうから、普段あまり美術に関心のない人たちの中にこっちから入り込んで、美術館に来てもらおうっていう考えに納得しました。駅には炭鉱の街だった絵が描かれてました。
パリから日帰りで、しかも往復20ユーロで行けてしまうところなので、ぜひ行ってみてください!!
0 件のコメント:
コメントを投稿