2014年7月31日木曜日

ヘルシーな和菓子にフランス人もとりこに!パリでも作りたてのおいしい和菓子が食べられる「和楽」

私は、パリでも茶道のお稽古に通っていることもあって、和菓子が大好きです。パリには美味しいケーキ屋さんがたくさんあって、たまに食べるケーキもいいけど、やっぱり日本人、普段食べたくなるのは断然、和菓子!あまり食べられないからこそ、羊羹一切れでも至福の喜び。

パリにも本格的な和菓子を味わえるところがあります。その一つが、2011年にボン・マルシェからも歩いて数分の場所にオープンした、「和楽」。ミシュラン一つ星の鉄板懐石料理の「あい田」が開いた和菓子屋さんです。和菓子職人は、「あい田」でお菓子を担当していた、村田崇徳さん。村田さんのご実家は愛知県にある老舗の和菓子屋さんで、自然な流れで和菓子職人へ。京都で修行をした後、2005年にサダハル・アオキでパティシエとして働いていたお兄さんを尋ねてパリへ。そのとき、「あい田」のオーナーに出会います。一度は日本へ戻りますが、2011年の「和楽」のオープンに誘われ再びパリへ舞い戻りました。



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パリに長年住んでいる大のお菓子好きの、茶道のお稽古仲間が紹介してくれて、ずっと行きたいと思ってました。ちょうど和菓子教室を開くというとお知らせを見つけたので、それに参加してきました!
今回は、葛饅頭、若あゆ、練りきりの3つ。もちろん、私は本格的な和菓子作りは初めて。料理も苦手なのに、大丈夫かなとどきどきして臨みました。


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始めに、和菓子の材料の説明があったのですが、意外にも、フランスのビオのお店で売っているものでほとんどできてしまうのには驚きでした!外国にいるのに、和菓子がもっと身近に感じることができたのは、とっても嬉しかったです。

一つずつ、村田さんが説明を交えながら、和気あいあいとした雰囲気の中で、参加したみんなで工程を分担して一緒に作っていきました。村田さんがお手本でささっとやって見せてくれるのですが、私はどうもぐちゃぐちゃになってしまって、全然うまくいかなかったです。熟練した技で、こんなに手間をかけて作られているんだと、身をもって感じました。
でも難しかったけど、簡単にはいかないのも、とっても面白かったです!!



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初めて作った和菓子たち!お手本にはほど遠く見た目はへなちょこだけど、鮎、水鳥、葉っぱなど、自分でかたち作ったものは、親ばか気分でどれもかわいい。もっともっと作りたくなりました!味は言うまでもなく、とーっても美味しかったです。バカンスまでの十数日、これで乗り切れそうです。

今回の参加者は半分が日本人、半分はフランス人など外国の人たちでした。前回は日本人はいなかったようで、日本を訪れて和菓子に出会って好きになった人や、日本好きな人たちの間で人づてに評判を聞いてやって来た人たちなどが主にお店にやってくるようです。でもまだまだ日本と関わりないフランス人には浸透していないと、村田さんには物足りないよう様子でした。



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それに、どうしても小豆、甘い豆、というのが食べられないという人もやっぱりいるみたいです。日本が好きだというだけではなく、最近和菓子がフランスで受け入れられ始めている理由の一つには、アレルギー関係でクリームや卵がだめな人たちも食べられるシンプルでヘルシーなお菓子が求められていることにあるようです。和菓子というと、数百年も続く伝統的で格のある上質なもの、というイメージがありますが、今の時代に合っている、というよりも時代が和菓子に追いついたのかもしれなくて面白いです。


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村田さんを囲んで、和楽のみなさんたち。和菓子職人として修行に励んでるベトナム人の女性も!2年後にはベトナムにお店だすんだよね?って村田さんに激励され、いやいやあと5年待って!って答えてたのが微笑ましかったです。
季節ごとに変わる和菓子が数種類用意され、店内で食べることもできます。お昼は、「あい田」のお弁当と和菓子のランチも。バカンス明けは、どんな和菓子が始まるのか、今から楽しみに待ってます!
トマトの羊羹を作ってみたり、ワインに合うような、チーズを加えた和菓子を考案してみたりと、 フランスにいるからこそできる新しい試みにも挑戦している村田さんですが、始めから崩したものばかりを提供してしまうと、それが日本の和菓子なのかと思われてしまうので、ほとんどは基本の伝統的な和菓子で、1つや2つだけ新しいものを加える、というさじ加減で考えているのだそうです。まずは和菓子を知ってもらう、という趣旨で、作っているところも見せるためにカウンター席を作り、店内もここはもうパリじゃないんじゃない?、と思わせるくらい日本の雰囲気が漂ってて私は落ち着きます。
日本では地方それぞれに老舗の和菓子屋さんがあって、お店ごとに銘菓があり、それを目当てに旅行する楽しみもあると思います。日本の和菓子の世界に広める伝道師としての重要な立ち位置も守りつつ、これから先、パリの「和楽」にここでしか食べられない和菓子目当てに、日本からも世界中からも和菓子ファンがやってくる日がくるんじゃないかなって想像しちゃいます。

33, rue Rousselet 75007 Paris
水曜日~日曜日


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2014年7月26日土曜日

ヴェネチアビエンナーレ日本館出展作家に選ばれた塩田千春の個展「小さな部屋」

2015年のヴェネチア・ビエンナーレの日本館の出展作家に、ベルリン在住のアーティスト塩田千春さんが選ばれたことが発表されましたが、今パリのギャラリー、Daniel Templonダニエル・テンプロン で個展が開かれてます。この間のギャラリーめぐりに連れていってもらったときに寄ってきました。
このギャラリーは、1966年にサンジェルマンデプレにオープンしました。その後、72年にポンピドゥー・センターのすぐ目と鼻の先の、ギャラリーの集まるrue Beaubourgにお引っ越し。この前紹介したギャラリーもそうでしたが、ここも通りに面してはいなくてアパートの一画にあり、少し見つけにくいところにありました。最初はクリスチャン・ボルタンスキーなど、コンセプチュアル・アート、ミニマル・アートなどを展示し、70年代からはアメリカのアーティストを紹介するようになっていったようです。日本からは、写真家の杉本博司やアラーキーの作品を扱っていて、草間弥生の展覧会も開いている、大御所作品をたくさん収集してる、フランスでも有数のギャラリー。
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この個展のテーマは、『小さな部屋』。1917年から1919年に書かれたフランツ・カフカの日記の一節にインスパイアされ、精神的な空間への旅を表現。
一番目につくのが、天井から無数の赤い糸が垂れ下げられ、レトロな旅行鞄が吊られ、ぶつかり合いながら、ゆらゆらゆれている巨大なインスタレーション。持ち主に忘れさられたのか、ぶつかり合う鈍い音が、荷物を運ぶ役割から解放された鞄たちの所在無さげを強調してました。
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それとは対照的に展示されているのが、黒と赤の毛糸が絡み合う彫刻作品。膨大な量の毛糸が張りめぐされた直方体の枠の中には、着物や楽器、箱が、身動きできないように縛り付けられてました。黒い糸は、髪の毛に見えてきてぞっとするし、とても苦しくなる作品郡でした。
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この作品みたいに、枠に括られて、いろんなしがらみによって身動きできないでいる自分自身を見てる気がして、恐ろしくなりました。
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塩田千春さんは、1972年大阪に生まれ、1997年からベルリンに住み制作を続けています。ベルリン芸術大学、ハンブルグ美術大学で学び、レベッカ・ホーン、マリーナ・アブラモヴィッチに師事。アメリカ、イギリス、モスクワ、バルセロナの美術館で展示されるなど、世界中で注目され、日本では、去年2013年に高知県立美術館で個展『ありがとうの手紙』、そして今年8月から名古屋のケンジタキギャラリーで個展が予定されてます。また、2011年にはダンスの振付家サシャ・ワルツが監督、演出した、能の名作『松風』をオペラに仕立て、ブリュッセルで上演された舞台のデザインも担当し、今年ドイツのキールオペラハウスで上演されたオペラ『TRISTAN UND ISOLDE 』のステージデザインもしているなんて!とっても気になります。パリに来たときは絶対観に行きたいです。
冒頭にも書きましたが、来年のヴェネチアビエンナーレでは、『掌の鍵』という作品を準備している塩田さんは、その作品制作のために、鍵を募集しているそうです。詳しくは、サイトまで。
どんな作品になるのか、楽しみです!
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2014年7月16日水曜日

誰でも気軽に楽しめるパリの陶芸市で、日本の影響を発見。Journées de la Céramique Paris

日本はとっても暑い時期だと思いますが、パリはなぜかまたどんどんと涼しくなってきて、上着が必要なくらいです。ときどき小雨が降ったりと安定しない天気の週末。サンジェルマンデプレからすぐ近くの、映画化もされた小説「ダ・ヴィンチ・コード」で有名になったサン=シュルピス教会の広場では、陶芸市 Journées de la Céramique Paris が開かれてました!!今年で17回目になりますが、私は初めて知って、茶道のお稽古仲間が連れてってくれました。陶芸市っていうのも初めてだったので、少し身構えてましたが、誰でもふらっと立ち寄れる、気軽なところでした。世界各国から陶芸作家が集まり、自分のブースで作品をたくさん展示してました。そして、気に入ったものがあればその場で買うこともできます。午後になるにつれて来場者もどんどん増えてきて、 とっても賑わっていて楽しいマーケットでした!!
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個人のブースが広場に並んでいる真ん中にはカフェのテントがあり、これがとっても面白い。マーケットで出展している陶芸作家たちが、このカフェに小さなカップを数個ずつ提供し、お客さんは並べてあるたくさんの中から好きなものを選んで飲むことができます。もし、ここでほしいなと思ったら買うこともできるし、その作家の展示しているブースまで案内してくれるのです。1ユーロでコーヒーか紅茶が飲めるので、お客さんはひっきりなしにやってきてました。
陶芸って言っても、お皿や器だけじゃありませんでした。陶磁器というくくりで、食器だけではなくて、フランスらしい色使いや、デザインで、置物やアート作品などいろんなものが展示されてました。
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それから、もちろん器のほうが多かったのですが、オリジナルで変わったものが並ぶ中で、茶道のお茶碗からの影響を強く受けた作品がたくさんあったのは面白いなと思いました。日本に行きたいけどまだ行ったことがないという作家が多かったのですが、楽茶碗、 天目茶碗や、織部風の器など、懐かしい感じのするものにも出会いました。
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すぐ上の写真のお茶碗を作っている柔和な雰囲気で迎えてくれた作家のおじいちゃんとその奥さん。 丁寧に説明してくれました。
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また、日本からも作家さんがやってきて素敵な展示をしてました。隣同士のブースで常滑から来たという陶芸家の宇賀和子さん(上)と、吉川千香子さん(下の作品)。お二人とも、人柄が表れたとってもかわいい作品たちで、欲しいものがいっぱいでした!!フランス人のお客さんからも、他の作家さんたちとは作風が違っていて魅力的だと評判で、すごく人気でした。お話も楽しくて、ここにずっと居座ってしまいました。常滑は実家からも近いので、今度日本に帰ったときは会いに行こうと思ってます!
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茶道から茶碗などのお道具にも興味がひろがって、パリで陶芸を始めようかなと思っているところなので、いろんな作品に触れられたのは参考にもなって、ますます作るのが楽しみになってきましたー!!来年の陶芸市では、何か買えたらいいなと思います。
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2014年7月11日金曜日

モード雑誌に引っ張りだこの写真家マリオ・テスティーノがパリのギャラリーYVON LAMBERTで個展

パリには古くて有名な美術館がたくさんあって、観光地にもなって賑わってますが、アートを楽しむ場所は美術館だけではなくて、芸術の都パリにはギャラリーもたっくさんあります。それにギャラリーのいいところは、無料なこと。私は詳しくないのですが、先週末、美術に詳しい人たちに、面白いギャラリーにいっぱい連れていってもらいました。
その中の一つ、パリの老舗ギャラリーYVON LAMBERT(イヴォン・ランバートギャラリー)では、世界各国のVOGUE や故ダイアナ妃を撮影して一躍有名となったアメリカの雑誌VANITY FAIRで活躍している、ファッションフォトグラファーのマリオ・テスティーノの個展が開かれてました。
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Qhapaq qolla dance costume. District and province of Paucartambo Cusco, Peru 2010 - Copyright Mario Testino
この個展の目玉として、去年2013年に発表された、『ALTA MODA(スペイン語でハイ・ファッションの意)』をヨーロッパで初めて展示しています。現在はロンドンを拠点としてますが、マリオ・テスティーノのはペルーのリマ出身。この作品は、彼の生まれ故郷ペルーのクスコの山岳地方の伝統的なお祭りの衣裳を身につけた、ペルー人のポートレート。5年以上に渡って調査をしに、現地に足を運んでいます。背景はスタジオのセットの絵なのかな?と気になっていたのですが、実はラテンアメリカ地方で最初の偉大な写真家の一人と称される、この地方の人々やランドスケープを撮り続けていたMartín Chambiマルティン・チャンビ(1891−1973)からインスパイアを受けて、チャンビの孫たちの協力を得て彼の写真の一部を背景に使ったということでした。クスコ地方を媒介として、数十年前の写真と伝統民族衣裳を着る現代の人びとが時空を結び、凝縮された壮大なストーリーを生んでいる力強い作品でした。ほぼ等身大に引き延ばされ、写真集で見るよりずっと感動します。
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Untitled, VMAN, Los Angeles, 2008 - Copyright Mario Testino
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Lily Donaldson & Anja Rubik, Allure, New York, 2010 - Copyright Mario Testino
そして、もう一つの部屋には、『Extremes』と題したこれまでの20年間のファッションフォトグラファーとしての活動を振り返る展示。初めて展示されるものもあり、テスティーノの代表作品が並びました。
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Natasha Poly & Eva Herzigova, Vogue, España, Madrid, 2012 - Copyright Mario Testino
[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=VpD-7chZe0U]
2階に上がるともう一つギャラリーがあって、そこでは現代アートのグループ展が行われてました。
それから、隣にはギャラリーの本屋さんがあって、写真集が面白いのがたくさんありました。日本の写真集も揃ってました。
イヴォン・ランバートギャラリーは、1966年にコレクターのイヴォン・ランバートがパリに開いたギャラリー。ミニマルアートやコンセプチュアルアートなどの、革新的なアーティストたちを紹介し、支援してます。場所は、マレ地区のブティックが連なるVieille-du-Temple通りにあります。ふらっと歩いてると見逃してしまうような、ひっそり隠れてますが、ブックショップが目印になります。初めて訪れたギャラリーでしたが、通ってしまいそうな予感のする素敵な場所でした!!
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2014年7月9日水曜日

プールで踊るオペラ座ダンサーをかき混ぜる!?屋外でファッションショーをみせた、Henrik Vibskov

ついこの間、オペラ座のバレエ衣装をラクロワがデザインした記事を書きましたが、今回はその逆。
パリコレメンズコレクションのショーに、コンテンポラリーダンスを組み込んだのは、Henrik Vibskov。


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今季のコレクションのテーマは「The Sticky brick Fingers」。建設現場のレンガが会場にはちらばってました。頭でっかちの前の見えない僧侶の帽子を全員かぶってたり、プールの浮き具をイメージしてしまうぶかっこうなトップスだったり、面白かったです。
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この4月に、スウェーデンナショナルバレエ団のためにAlexander Ekman アレクサンダー・エクマンが振り付けた、バレエ「Swan Lake」の衣裳を、ヘンリック・ビブスコブがデザインしました。オペラ座舞台には、巨大なプールが作られ水しぶりを上げる前代未聞の作品。その延長で、このファッションショーでダンサーたちとのコラボレーションが実現。市庁舎のすぐ横に設けられた会場には、即席の150平米、4000ℓの水で浸された黒いプールが作られ、その中でオペラ座ダンサーたち10人が踊っていました。そのプールのまわりがランウェイになっていて、モデルさんたちがぐるぐるとまわり、踊るダンサーたちをかきまぜてました。
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[youtube=https://www.youtube.com/watch?v=Is6efq_tbCI]
夕暮れ時の自然光が降り注いで気持ちのよい気候の中で、写真で分かると思いますが、会場には仕切りもない野外なので、道行く人たちにも立ち止まって何が起こってるんだ?って覗いてたり、とっても楽しいショーでした。閉じこもった商業的なショーではない、ファッションに興味がない人でも誰でも参加できる開かれたショーの空間作りは、巨大企業のラグジュアリーメゾンができない、若いブランドの特権。
少し余談になりますが、この記事を書いていて、地理に弱い私の頭の中では国がこんがらがってしまいました。整理すると、デザイナー、ヘンリック・ヴィブスコフはデンマーク人でデンマークの首都コペンハーゲンで活動。振付家のアレクサンダー・エクマンと、音楽コンポーザーのMikael Karlssonはスウェーデン人、そして踊るダンサーたちは、ノルウェー・ナショナルバレエ団。スポンサーも、デンマークアート財団とノルウェーナショナルバレエ団。一つの国ではできないことでも、国をまたがってスカンジナビア諸国の3カ国が集まり、パリへやってきてこうやってコラボレーションしてることがとてもとっても素敵なことだなと思いました。
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