2014年4月30日水曜日

パリなのにアフリカ!Boboが集まる噂のゲットー・ミュージアムに潜入 LE COMPTOIR GÉNÉRAL

サマータイムに入ってからどんどん日がのびて、夜の9時になってもまだ明るく、もう夏が近づいてきてるはずだと思ってサンマルタン運河沿いに遊びに来ても、最近は毎日のように、雨が降ったりやんだり、夕立だったりで天候が不安定。そんなときにぴったりな面白い場所があります。

IMG_3495

運河を歩いてると、あやしい路地に誘われてふらりとたどり着いたところは、仲間内の秘密基地のように楽しい雰囲気を醸し出してる、Le Comptoir General。少し前から面白いところがあるってパリで話題になっていましたが、ついに潜入してみました。

入り口をどきどきしながらそろっと入ってみると、そこはさびれたホテルに迷い込んだよう。赤い絨毯が招きいれてくれ、壁にはアフリカの歴代独裁者たちがアンティークのシャンデリアに照らされてました。

IMG_3468

ここは、アフリカのゲットーの文化やアートを収集し、保存し、紹介している場所で、パリの真ん中でアフリカにいるような体験ができるとっても面白いゲットーミュージアム。ゲットーというのは、移民系の集合密集住居地区のこと。特にフランスはアフリカからの移民がとても多いです。

この場所の創設者であり友人同士のEtienne Tron と Aurélien Laffonは、子どもの頃からパリのジプシーに囲まれた地域で過ごした幼馴染で、アフリカの音楽や文化も身近にあるのが当たり前に育ったパリジャン。DJ,音楽プロデューサーとして活動しているエティエンヌとアートコレクターであるオレリアンは、2010年から二人で活動するようになり、レコードレーベルを立ち上げ、アフリカのクラブミュージックのコンピレーションアルバムをリリースし、そしてル・コントワー・ジェネラルも創立した。注目されることが少なかったり、触れる機会があまりない、アフリカの素晴らしい文化的活動のディレクションをし、発表の場を設けたり、ビジネスに結びつけるようなサポートする非営利組織として機能しています。そして、平日は、環境問題に取り組む企業や団体に場所の貸し出しも行っています。


IMG_3467

この室内の設備はすべて、環境への負荷を軽減することを一番に考えられています。オーガニックのものを使い、雨水を回収しそれを利用、廃材を再利用したり。つるが巻き付いた柱は、木が生えてるみたいで、広場は森に来たみたい。たくさんのヴィンテージのシックでカラフルなソファーと、使い古された学校のテーブルと机など、組み合わせはごちゃまぜだけど、無造作に置かれてるような古い家具たちもそこにいる人たちも全部合わせて、異国な雰囲気なのに居心地いい空間に仕上がってました。


PC220828

IMG_3465

とにかく、なんでもあって、カフェでアフリカやアジアの料理を楽しんだり飲んだりおしゃべりしてくつろいだりする人たちが大半だったけど、図書館もあれば、ヴィンテージショップもあるし、アフリカンなヘアスタイルを体験できるバーバーもあれば、

PC220825

ステージもあり。このときは赤ちゃんたちが走り回ってたけど、ライブも企画されたり、映画の無料上映会もあります。

いろんなイベントの予定はウェブページで確認してみてください!

PC220833

中庭は、緑いっぱいで覆われていている喫煙スペース。室内とは打って変わって、とっても静か。

IMG_3494

IMG_3499

IMG_3489

「魔女の部屋」と題した、アフリカの古くから伝わる魔術をテーマにしたアートの展示スペースで、陰気でカオスなオブジェの寄せ集めが、妙にこの空間とぴったりでデコレーションになってました。

PC220823


PC220821

私が一番心を打たれたところは、日曜日の午後開催されてる、ちびっ子教室。とってもファンキーなお姉さんたちが、子どもたちに読み聞かせしたり、ゲームして遊んでくれたり、ワークショップしたりと、とてもとても素敵な雰囲気で楽しそう。

歩いて見てるだけでも楽しいけど、イベントのときにまた来たいです!

PC220811

LE COMPTOIR GÉNÉRAL
80 quai de Jemmapes
Paris
11h00-01h00
たまにお休みのときがあるので、ウェブページで確認してください!http://www.lecomptoirgeneral.com/en

Facebook作りました。パリの生活、いろいろ載せてます。
https://www.facebook.com/taconnotation

2014年4月26日土曜日

ル・コルビュジェが生涯を過ごしたアトリエとアパート

去年の秋にフランスに唯一あるアルヴァ・アアルト建築の、パリ郊外に建っているギャラリストのルイ・カレの邸宅を見学しました。(そのことはブログに詳しく書いてます→https://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/1101
カレは、ル・コルビュジェに邸宅の設計を頼もうと始めは考えていたけど、コンクリートを好まなかったカレは、代わりに北欧の建築家アアルトに手紙を書いた、という話を聞きました。コルビュジェが設計して建てたことで、二人が移り住み、そして出会うことになった、Molitorビル(通称24N.C)のアパートのことが気になったので訪れてみました。
PC210595
そのアパートは、パリの高級住宅街といわれる16区の外れにあります。とっても静かなところで、あまり人通りも多くないのですが、広大なブローニュの森に囲まれて、全仏オープンの会場でもあるスタッド・ローラン・ギャロス、サッカーチームのパリ・サン=ジェルマンのホームスタジアムのパーク・デ・プランス、プールやマラソンコースなどなど、あらゆるスポーツ施設が目と鼻の先。西と東に面しているちょっと変わった位置取りで、建築の歴史で最初のガラスで覆われている住居です。
PC210591
1931年にコルビュジェといとこのピエールは、不動産会社からこの地にアパートを建てる計画を依頼されますが、このプロジェクトに必要な資金も十分に集まらないままなのに、建設工事に入るよう命じられてしまいます。借り手の見つからない部屋がいくつかあったことで、何ヶ月も遅れ、なんとか1934年に完成。また、コルビュジェは不動産会社に交渉して、最上階の7、8階を買い取り、17年間住んでいたサンジェルマンの家から、妻のイヴォンヌと移り住んできました。その後、1965年に亡くなるまでずっとこのアパートで過ごしていたそうです。なんと、1935年にはその不動産会社は財政難のため破産してしまい、立ち退きを迫られたりと苦労の多かったようです。
PC210588
6階までエレベーターで上がっていき、狭い階段をのぼり、とっても細い廊下を通ってたどり着きます。左に行くと、大きなアーチを描いている、石の壁がむきだしになっているアトリエがあります。この場所、すごく見覚えがありました。数年前の森美術館で行われたコルビュジェ展で再現されてた場所でとても懐かしく思いました。普通、アーティストのアトリエは、常に同じ明るさであり、暗くならないように、北向き。でもここは、東と西の両側から光が入ってきます。そのため光を拡散させるために、ガラスブロックと、半透明のガラス使用。美術館で見たときは、こんな穴蔵で絵を描いていたのか、なんて思ってましたが、実際に来てみるととまるで違ってました。外はどんよりした曇り空で気分も沈みそうなのに、アトリエ内は照明も点けてないのに本当に明るくて、すがすがしい光が満ち満ちているのでとても気持ちがいいし、すごく広いわけでもないのに開放感あります。
PC210645
コルビュジェは、この場所で膨大な数の作品を生み出していました。午前中はアパートで絵を描いて、午後は建築事務所へ出かける毎日。事務所はセーヴ・バビロン駅のボン・マルシェのすぐ向かいにあったので、メトロ10番線で一本でつながりました。所々にこうやって当時の写真が飾ってあるので、この場所がどのように使われていたのか想像してみたり、私もメトロ10番線はよく利用する線なので、コルビュジェの生活を辿っているようでとっても面白かったです。
PC210641
アトリエの奥は書斎と寝室と物置になってます。ここも、まぶしいくらいの明るさ。でも、もぬけの殻で少しさみしいです。
PC210596
PC210603
入り口を右に行くと、居間とダイニング、そしてその奥は寝室になってます。前に行ったカレ邸と違って、コルビュジェが住んでいたときをそのまま保存してるわけではなく、構造を見せているだけなので、人が住んでいた気配がしないのがさみしかったです。写真を頼りにするのみ。
入り口にあった、大きな壁のような扉で、仕切ることができて、お客さんがきたときなどは誘導してくれる役割。その大きな扉を開いたままにしておくと、アトリエも居間も光が充満してとっても明るくなります。
PC210619
キッチンの家具も多くはコルビュジェがデザインしたもの。 テーブルもコルビュジェデザイン。死亡解剖のテーブルからインスパイアされているものらしいです。テーブルから続いてくように、そこだけ色ガラスでくりぬかれてる窓があり、見学しに行った日には、ステンドグラスアーティストの素敵なおじいちゃんが色ガラスの色を合わせにやってきてました。木箱にはものすごいたくさんの色のサンプルが入ってました。
PC210629
入り口すぐにあった螺旋階段を上がって8階に行くと、ゲストルームになってました。
PC210584
地上階のエレベーターの前の壁には、コルビュジェのドローイングが飾ってありました。
PC210675
土曜日は予約なしで誰でも入ることができます。このビルの入り口にインターフォンがあって、呼び出せば開けてくれます。中にないって突き当たりにエレベーターがあるので、6階まであがってください。
ブローニュの森に遊びに来たときなどに、寄ってみてくださいー
l’appartement-atelier de Le Corbusier
24, rue Nungesser et Coli
75016 Paris
土曜日 10h - 13h / 13h30 - 17h

Facebook作りました。パリの生活、いろいろ載せてます。
https://www.facebook.com/taconnotation

2014年4月19日土曜日

舞台芸術界の鬼才ロバート・ウィルソンの5時間にもおよぶ幻のオペラ『Einstein on the Beach』ワールドツアー

コンテンポラリーダンスを観るのが大好きで数年前から毎月、多いときは毎週観に行ってるのですが、最近は舞台芸術まで広げて、演劇やオペラもときどき観ることにしてます。先日、秋から冬にかけて毎年パリで開催される舞台芸術の祭典、Festival d'automne a paris の今季の公演がとうとうすべて終わってしまいました。今回フィーチャーされていたのは、舞台芸術界の鬼才と称され世界中からコアなファンを集めている、ロバート・ウィルソン。彼は、このFestival d'automne a parisが始まった40年前から計18回も招聘されている常連で、今季は3つも作品を引提げてパリへやってきました。そして同時期にルーブル美術館でアートワークの展示やパフォーマンスもあり、年末から年始にかけて、パリのあちこちの劇場や美術館ではロバート・ウィルソン祭のようでした。私は、これまで日にちが合わなかったり、チケットが完売してしまっていたりとなかなか観る機会がなかったのですが、2年越しの思いでやっと彼の手がけたオペラ『Einstein on the Beach』と、演劇『Peter Pan』を観ることができました。
Einstein_On_The_Beach_2
[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=1Jkr5TNcF9g#t=66]
『Einstein on the Beach』は、その題名のとおり物理学者のアルベルト・アインシュタインをテーマにし、これまでのオペラの伝統、舞台芸術の常識を壊したアヴァンギャルドな作品。1976年にフランスのアヴィニョン演劇祭で初演され、世界中をまわり大成功を収めました。2012年から始まった再演のワールドツアーでロンドンやニューヨークをめぐって、今年やってきたパリ公演はシャトレ劇場で上演されました。いつもより開演時間が早いにも関わらず、ものすごい人が詰めかけ、劇場はごった返し。まだ全員が着席していないのにすでに舞台に人が出てきていて、プロローグが始まりました。4幕と5つの間奏、そしてダンス2幕の構成で全部でなんと5時間弱。休憩も挟まないので、劇場の出入りが自由にでき、間奏に入るたびにたくさんの観客が立ったり戻ってきたりしてたのには本当にびっくりしました。
Einstein_On_The_Beach_3
想像する伝統的なオペラとはまるでかってが違いました。ストーリーやナレーションもないから、感情移入することも続きを期待したりすることもありません。それだけに、頭の思考回路を通さないで、舞台の壮大で幻想的な視覚的イメージと、時間の感覚を揺るがせ音に酔ってゆらゆらしてくるミニマルミュージックが全身に直接突き刺さってきました。舞台全部に共通しているのが、アインシュタインの見た目、ボサボサの髪をゆらしたおじいちゃん(=サスペンダーにハイウエストのズボン)という様相だけ。そして幕の前後の脈略はなく、それぞれの電車、裁判所、宇宙船のシーンに分かれ、アインシュタインの相対性理論、統一場理論を表現。裁判所は化学実験室のようだったし、上の写真のラストのシーンでは原子力爆弾をほのめかしてるように感じるところも。また、動きに人間身が感じられなく、機械みたいなゆっくりでぎこちなさと、50年代のアメリカのポスターのようなぎっとりしてのっぺりした顔つき。すべてのテクノロジーの発展が必ずしもよいことだけじゃなく、同様に破滅をもたらすこともあり、つかんでいたと思った幸せは虚構だったのかなと思って、寂しい気分になったりしました。
作曲家のフィリップ・グラスとコラボレーションした最初の作品で、音楽も秀逸。豪華なオーケストラの代わりに、シンセサイザーや古代楽器を使ったり、話言葉の台詞らしいものは一切ないし、歌詞も言葉ではなく数字や音節のみ。民族音楽や宗教音楽からインスピレーションを得ていて、少しずつ変化しながら何度も繰り返されていきます。その様子は宗教のよう。呪文を唱えていたり何かの儀式を執り行っているようにも感じてきて、観客はそれに魅せられた参列する巡礼者。5時間もその場にとどまらせていたのには、何かに取り憑かれたとしか思えません。

Peter_Pan_Wilson_1
それからもう一つは、パリ私立劇場で上演された、新作の『Peter Pan』。誰もが知ってる物語を、CocoRosieの音楽に乗せて、ロバート・ウィルソン流のちょっと毒のある不思議な、大人に向けたピーターパンの世界を繰り広げる。全員白塗りで不気味な形相はまるで死神のようだし、ピーターパンもやんちゃな少年ではなく影のある青年風で、子どもだけの国のネバーランドに、死の世界を見ているみたいでした。ベッドが羊になっていたり、乳母役の犬がメイド服を着ていたり、空を飛んでいくときの雲、タイガーリリーがいる崖など、重要なシーンの舞台美術が本当に素晴らしいのは言うまでもなく、それに加えてベルリンを拠点とする劇団Berliner Ensembleの団員たちの演技がとってもよかったです!ファンになってしまいました。ベルリンでもいつか彼らの舞台を観てみたいなと思います。
Peter_Pan_Wilson_2
Robert_Wilson_CocoRosie
ロバート・ウィルソンと、歌と音楽を担当したCocoRosie の二人。
IMG_3796

ロバート・ウィルソンは、1941年アメリカのテキサス生まれ。大学でビジネスや建築を学ぶ。舞台については全く教育を受けていないと言ってます。1968年に、実験的なパフォーマンスカンパニー、the Byrd Hoffman School of Byrds を立ち上げ、彼らと舞台作品を作っていきます。公演時間が非常に長いことが彼の作品の特徴で、7日間山の頂上で演じられたり、84年のロサンゼルスオリンピックのために計画されていた『the CIVIL warS』は12時間だった。結局予算の関係ですべて中止になってしまったという逸話が表してるように、とにかく尋常じゃないスケールの作品が多い。
[vimeo=http://vimeo.com/81692749]
IMG_3809

それから舞台の他にも、アート作品も創っていて、1993年のベネチアビエンナーレでは彫刻作品で金獅子賞を受賞してます。そんな彼がルーブル美術館で展示したのは、『Living Rooms』というインスタレーション。ニューヨークから2時間のところに、ロバート・ウィルソンのアートコレクションや、作品アーカイブを収蔵しているThe Watermill Centerという場所があり、そこはアーティストインレジデンスとなっていて、若手のパフォーミングアーティストが毎年夏に招かれている。アートに囲まれた毎日の生活の中で、それらが常にインスピレーションソースとなっている、そんな場所をイメージしている。また、別の場所では、レディ・ガガが絵画の中の女性に扮した、ポートレートのビデオアート作品も展示されてました。
実は6月にもロバート・ウィルソンのオペラ座での公演が待っています。私の中でダンスではアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが一番ですが、舞台では今のところロバート・ウィルソンが一番。ぜひぜひ機会があったら観てみてください!
Facebook作りました。パリの生活、いろいろ載せてます。
https://www.facebook.com/taconnotation

2014年4月12日土曜日

100年前にタイムスリップ。パリの世界一美しい骨格標本の博物館。古生物比較解剖学展示館 

毎週デッサン教室に通っているのですが、駅から歩くときに酸性雨で溶けた人の像が埋め込まれた古いレンガ作りの建物を横目で見てました。そのガラス窓からは怪しげな光と気味の悪い煙が立ち込めていて、この何かでそうな雰囲気のする面白そうなところは何だろうと気になって、去年の夏に初めて訪れました。今ではその魅力にすっかりはまり、パリで一番のお気に入りの特別な場所になってしまったのは、650もの骨の標本が集められて展示されている古生物・比較解剖学展示館。これまでにもパリでいろんな美術館や博物館、劇場などなど行ってきましたが、この博物館ほど衝撃を受けたところはありません!この博物館は、パリの植物園内にある、国立自然史博物館の一部なのですが、広い敷地にいあるもう一つの博物館の動物や魚の剥製が展示されている進化大展示館については、去年ブログでも紹介しましたので詳しくはこちら。http://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/148
P7210041
1900年のパリ万国博覧会に向けて1898年に開館した歴史のある建物で、そこに足を一歩踏み入れた瞬間、100年前にタイムスリップしたみたいです!!進化大展示館では、剥製の動物たちがライオンキングみたいに大行進していましたが、ここでは皮をはいだだけの筋肉の人体模型が先頭になって、ホネホネになった動物たちを率いているように見えます。でもなんだか偉そうにしてて、おこがましいというか、とてもヨーロッパ的な気がしてしまいます。万博のために作ったところなので、当時と展示の様子が同じかどうかは分かりませんが、フランスの力を見せる場所だった、ということかもしれません。
P7210046
そうはいっても、この趣のある博物館の内装におさめられたこれだけの数のホネたちの壮大な展示は圧巻。レンガの外壁に、内側は白い壁に鉄のアーチで輪郭線が描かれどこまでも続いていそうで目がくらむ。そのどこから来たのか分からないくらい深い底から、古めかしくよれた色の木のにのせられ少しくすんだ骨格標本の動物たちが次々に現れるその美しさに感動しました!
P7210156
P7210101
壁沿いには、ガラスケースの棚に内蔵や脳のホルマリン浸けや、小動物や魚たちなどの標本が展示されてました。それになんといっても、展示の仕方が素晴らしいのです。電子化されてる部分もなく、特別なことをしてる訳ではないのですが、素敵なカリグラフィーの名前プレートが日に焼けていい色になっていたり、飴色になったつるつるの木の棚のガラスの向こうに無造作に並べられた変色した瓶など、人が作為的に作りだすことができない、この博物館が過ごしてきた時代によって彩られた装飾に心奪われてしまいます。私は一日中いても飽きないと思います。
P7210047
ちびっこたちが熱心に見てたのは、赤ちゃんから大人になるまでの成長していく過程が展示される棚。人間の進化の様子も比べられるようになってます。私は赤ちゃんの骨の標本を初めてみました。赤ちゃんの全身の標本は作り物か人形なんじゃないかと見まがうほどで、始めは分からなくて驚きました。
P7210219
2階に上がってみると、54万年前に遡って、恐竜やマンモスなど、絶滅した哺乳類の化石が並んでいました。アールヌーボーの装飾がとっても素敵なバルコニー部分には、貝や魚の化石。手作りの解説のパネルがすごくいいです。いい具合に色褪せて、余計な部分を省き分かりやすくデザインされています。これを見るためにも一番上まで登る価値ありです。
P7210039
この植物園はとても広くて、大きな公園になっています。その中にはもちろん温室の植物園もあるし、前述の二つの博物館と、実はなんと動物園まであります。博物館の大進化展示室で動物や魚の剥製を見た後、この古生物展示室で骨や内臓の標本で見えない部分の謎を解決し、動物園で実際に生きて動いている様子まで観察できてしまうという、自然界の不思議に興味がある大人も子どもにも至れり尽くせりな場所です。古い建物がいつまでも残せるヨーロッパはずるいなぁと思います。
Galeries d'Anatomie comparée et de Paléontologie
2 rue Buffon
75005 Paris
10時〜17時 火曜日休館
Facebook作りました。パリの生活、いろいろ載せてます。
https://www.facebook.com/taconnotation

2014年4月9日水曜日

世界中のVOGUEで活躍したファッション・フォトグラファーたちの100年をめぐる展覧会「Papier glacé!」

以前ブログでも紹介しましたが、3年間の改装後の最初に行われた「アライア展」で大好評だったガリエラ宮。次に始まったのは、「Papier glacé!」という、 1918年から現在までのファッション雑誌VOGUEで活躍した90人ものファッション・フォトグラファーたちを、ニューヨーク、パリ、ミラノ、ロンドンから集められた150を超す貴重なオリジナルプリントで顧みる展示です!
2 Rawlings (72)
John Rawlings, Vogue américain, mars 1943
© 1943 Condé Nast
美術館の中に巨大な雑誌が立てられているかのように壁が作られ、真っ白な背景に展示されている写真はページを追って行くようでした。年代を辿っていくというものではなく、スタジオのセット、フィクション、ストリート、デザイン・表象、スチール写真、身体、ポートレートなどの主要なテーマごとに分けられていました。フォトグラファーたちが世代を超えてお互いどのように影響しあっていたのか、その関係性を感じられる構成になっていました。
7 Clarke 1951 Heim (72)
Henry Clarke, Vogue américain, mai 1951 (non publiée).
© Henry Clarke / Galliera

VOGUE を出版している、Condé Nast社の始まりは、1909年Condé Montrose Nastが、1892年に初版された雑誌VOGUEを買い取ったことから。すぐにアメリカのファッション雑誌でメジャーな一つとしてのし上がった。100年以上もの歴史がある雑誌!イギリス版は1916年、フランス版は1920年、ちなみに日本版のVOGUE JAPANは1999年の7月発行。 数年前にこのブログでパリのヴィンテージ雑誌のお店を紹介しましたが、そのとき見た10−20年代の雑誌ではイラストレーションが主流でした。その後だんだんと写真が重要な位置を占めるようになっていきます。


Vogue Paris - February 1955

Guy Bourdin, Vogue France, février 1955
© Estate of Guy Bourdin, reproduit avec l’autorisation de Art + Commerce

この100年もの間、ほとんどすべての著名なファッション・フォトグラファーが、VOGUEと共に歩みキャリアを積んでいきますが、ときにそれは雑誌の枠を超えて、ファッションの歴史にも多大な影響を与えていくことにも。

それに、すでに名の知れ渡った著名な写真家と、まだキャリアの浅い新しい才能が1冊の雑誌の中で共演していることになるファッション雑誌は、新人フォトグラファーたちの発掘という大きな役割も果たしている。ギイ・ブルダン(Guy Bourdin)は、1955年にVOGUEで初めて仕事をしてその後30年以上写真を撮り続けた。アーヴィング・ペン(Irving Penn)はなんと60年間!も、ヘルムート・ニュートン(Helmut Newton)は40年間もVOGUE のために写真を撮っていたというから、本当に驚きました!!彼らのまだ名の知られていない頃の作品を見ることができるのも貴重な体験でした。


12 Turbeville (72)
Deborah Turbeville, Vogue américain, mai 1975
© 1975 Condé Nast

VOGUE に掲載されているようなハイファッションの服に手が出なくても、アーヴィング・ペン が「私はいつも、服ではなく夢を売っていると感じている」と語っているように、ファッションストーリーのページのスタイリストやフォトグラファーたちがディレクションした舞台でモデルたちが役を演じているような幻想的なヴィジュアルに誰もが魅了されてしまいます。上の写真のデボラ・タービル(Deborah Turville) やヘルムート・ニュートンは、それまでの伝統的なエレガントで美しい表現から逸脱し、ストーリーを感じさせる彼らの写真に、世界に衝撃を与えた。


4 Joffé (72)
Constantin Joffé, Vogue américain, septembre 1945
© 1945 Condé Nast

11 Bailey (72)

David Bailey, Vogue américain, avril 1962
© 1962 Condé Nast

1930年代までは海の設定でもセットを作ってスタジオで撮影をしてましたが、30年代後半から徐々にストリートに出てロケに行くようになったようです。50年代からは、ウィリアム・クライン(William Klein)のように、報道写真家がファッション界にどんどんやってきて、セットでかっちり撮っていたものから、より躍動感のあるドキュメンタリーっぽい写真が増えていきます。知っている場所で撮られることによって、ファッションが以前よりももっと若く、大衆的になっていったっていうといころが面白いです。


Anne Catherine Lacroix - Vogue Paris, 2002


Inez & Vinoodh, Vogue France, octobre 2002
© Courtesy Inez & Vinoodh and Gagosian Gallery


また、バレンシアガのスーツや、ジャンヌ・ランバンのイブニングドレス、コム・デ・ギャルソンのドレスやなどなど15体のガリエラ宮の所蔵するクチュールドレスが、写真と呼応するように飾られているのも必見。脇にある部屋では、当時の雑誌の展示もありました。直接触れて見ることはできませんが、雑誌のページをぺらぺらめくっているような映像で展示されてるので、楽しいです。そして最後のセクションでは、大スクリーンに最近の映像作品が映し出されていて、それもすごく面白いです。10分くらいだったので全部観てしまいました。

この展示は世界中を巡回する予定で、ベルリンやミラノ、チューリッヒなどを回った後、東京にも続くようです!


Palais Galliera
Musee de la mode
10 av.Pierre 1er de Serbie
5月25日まで

Facebook作りました。パリの生活、いろいろ載せてます。
https://www.facebook.com/taconnotation