2014年4月26日土曜日

ル・コルビュジェが生涯を過ごしたアトリエとアパート

去年の秋にフランスに唯一あるアルヴァ・アアルト建築の、パリ郊外に建っているギャラリストのルイ・カレの邸宅を見学しました。(そのことはブログに詳しく書いてます→https://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/1101
カレは、ル・コルビュジェに邸宅の設計を頼もうと始めは考えていたけど、コンクリートを好まなかったカレは、代わりに北欧の建築家アアルトに手紙を書いた、という話を聞きました。コルビュジェが設計して建てたことで、二人が移り住み、そして出会うことになった、Molitorビル(通称24N.C)のアパートのことが気になったので訪れてみました。
PC210595
そのアパートは、パリの高級住宅街といわれる16区の外れにあります。とっても静かなところで、あまり人通りも多くないのですが、広大なブローニュの森に囲まれて、全仏オープンの会場でもあるスタッド・ローラン・ギャロス、サッカーチームのパリ・サン=ジェルマンのホームスタジアムのパーク・デ・プランス、プールやマラソンコースなどなど、あらゆるスポーツ施設が目と鼻の先。西と東に面しているちょっと変わった位置取りで、建築の歴史で最初のガラスで覆われている住居です。
PC210591
1931年にコルビュジェといとこのピエールは、不動産会社からこの地にアパートを建てる計画を依頼されますが、このプロジェクトに必要な資金も十分に集まらないままなのに、建設工事に入るよう命じられてしまいます。借り手の見つからない部屋がいくつかあったことで、何ヶ月も遅れ、なんとか1934年に完成。また、コルビュジェは不動産会社に交渉して、最上階の7、8階を買い取り、17年間住んでいたサンジェルマンの家から、妻のイヴォンヌと移り住んできました。その後、1965年に亡くなるまでずっとこのアパートで過ごしていたそうです。なんと、1935年にはその不動産会社は財政難のため破産してしまい、立ち退きを迫られたりと苦労の多かったようです。
PC210588
6階までエレベーターで上がっていき、狭い階段をのぼり、とっても細い廊下を通ってたどり着きます。左に行くと、大きなアーチを描いている、石の壁がむきだしになっているアトリエがあります。この場所、すごく見覚えがありました。数年前の森美術館で行われたコルビュジェ展で再現されてた場所でとても懐かしく思いました。普通、アーティストのアトリエは、常に同じ明るさであり、暗くならないように、北向き。でもここは、東と西の両側から光が入ってきます。そのため光を拡散させるために、ガラスブロックと、半透明のガラス使用。美術館で見たときは、こんな穴蔵で絵を描いていたのか、なんて思ってましたが、実際に来てみるととまるで違ってました。外はどんよりした曇り空で気分も沈みそうなのに、アトリエ内は照明も点けてないのに本当に明るくて、すがすがしい光が満ち満ちているのでとても気持ちがいいし、すごく広いわけでもないのに開放感あります。
PC210645
コルビュジェは、この場所で膨大な数の作品を生み出していました。午前中はアパートで絵を描いて、午後は建築事務所へ出かける毎日。事務所はセーヴ・バビロン駅のボン・マルシェのすぐ向かいにあったので、メトロ10番線で一本でつながりました。所々にこうやって当時の写真が飾ってあるので、この場所がどのように使われていたのか想像してみたり、私もメトロ10番線はよく利用する線なので、コルビュジェの生活を辿っているようでとっても面白かったです。
PC210641
アトリエの奥は書斎と寝室と物置になってます。ここも、まぶしいくらいの明るさ。でも、もぬけの殻で少しさみしいです。
PC210596
PC210603
入り口を右に行くと、居間とダイニング、そしてその奥は寝室になってます。前に行ったカレ邸と違って、コルビュジェが住んでいたときをそのまま保存してるわけではなく、構造を見せているだけなので、人が住んでいた気配がしないのがさみしかったです。写真を頼りにするのみ。
入り口にあった、大きな壁のような扉で、仕切ることができて、お客さんがきたときなどは誘導してくれる役割。その大きな扉を開いたままにしておくと、アトリエも居間も光が充満してとっても明るくなります。
PC210619
キッチンの家具も多くはコルビュジェがデザインしたもの。 テーブルもコルビュジェデザイン。死亡解剖のテーブルからインスパイアされているものらしいです。テーブルから続いてくように、そこだけ色ガラスでくりぬかれてる窓があり、見学しに行った日には、ステンドグラスアーティストの素敵なおじいちゃんが色ガラスの色を合わせにやってきてました。木箱にはものすごいたくさんの色のサンプルが入ってました。
PC210629
入り口すぐにあった螺旋階段を上がって8階に行くと、ゲストルームになってました。
PC210584
地上階のエレベーターの前の壁には、コルビュジェのドローイングが飾ってありました。
PC210675
土曜日は予約なしで誰でも入ることができます。このビルの入り口にインターフォンがあって、呼び出せば開けてくれます。中にないって突き当たりにエレベーターがあるので、6階まであがってください。
ブローニュの森に遊びに来たときなどに、寄ってみてくださいー
l’appartement-atelier de Le Corbusier
24, rue Nungesser et Coli
75016 Paris
土曜日 10h - 13h / 13h30 - 17h

Facebook作りました。パリの生活、いろいろ載せてます。
https://www.facebook.com/taconnotation

0 件のコメント:

コメントを投稿