2014年9月19日金曜日

フランス文化遺産の日は、140年前のチョコレート工場を探検。Chocolaterie Menier

先週末のフランスは、Journée de patrimoine 文化遺産の日で、普段は一般公開されていない歴史的な建造物を、年に一度だけ公開してくれる日でした。私は今年初めて参加しました。
今年は、パリに滞在している建築に詳しい研究者の友だちが誘ってくれて、140年前のチョコレート工場を見学しに行ってきました!
パリの郊外行きの電車、RERに乗って20分、パリとは全く違う景色の広がる、静かな小さな町Noisielに着きました。木が生い茂る長い遊歩道を通り抜け、少し迷いながら住宅地を過ぎると、人の流れが見えてついて行ったら、もうすでにたくさんの人たちが列になっていて、この町の人たちには有名なスポットみたいでした。
ここは、Menierという1816年に創業したチョコレートの会社の1872年に建てられた工場でした。もともとは薬としてカカオパウダーを売っていた製薬会社で、その後、タブレットのお菓子のチョコレートを作るようになりました。1988年にスイスの大企業Nestlé(ネスレ)のグループ会社となり、1996年からこの場所がNestléのフランスの本部として使われるようになりました。今でも、Menierのチョコレートはどのスーパーに行っても置いてあります。黄緑色の背景に女の子が描かれているクラシックなパッケージで気になるチョコレート。
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Nestléの敷地はとっても広いのですが、その中でも、カラフルでとってもかわいい目を惹くのがLe Moulinと呼ばれる、カカオの豆を砕くための建物。世界で初めてレンガを積んでいくのではなく、鉄骨を組んで作っていった建物で、国の歴史的建造物に指定され、ています。時計や屋根の下にも、とっても素敵な装飾がされてます。チョコレートのための建物ががこんなにかわいくて、夢があって、わくわくさせられます!
少し歩いて、続く次の建物は、La Halle Eiffelと呼ばれるあのパリのエッフェル塔を作ったEiffelが手がけたものです。
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アーチの天井の真ん中から差し込む光でとっても明るい、チョコレートを保存するための場所だったところで、ここではNestléらしく、コーヒーを配ってくれました。朝早かったので、宣伝のためだったとしても、こういうのってうれしかったです。私たちは、ココアをいただきました!P9150049
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その地下では、Nestléの歴代の広告の展示でした。赤ちゃんの粉ミルクから始まった会社なだけに、赤ちゃんの絵ばかりで、かわいかったー!
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中庭を通りすぎていくと、
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さっき見た、カラフルな建物の地下に辿り着き、そこでは、当時使われていた機械が展示されてました。全く仕組みは分からないのですが、こんなに大きく難しそうな機械じゃないと、チョコレートって作られないのかとびっくり。
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そこを出ると、こんな運河が広がっていて、向こうには森が見えます。サイクリングしてる人たちもいたりして、パリから数十分のところにある大企業の敷地だとは思えないくらい自然がいっぱい。こんなところだったら、毎日気持ちよく仕事できそうだなって思いました。
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柱の面白い、La Cathédraleは、エッフェル塔建設ではEiffelのもとでデザインに携わっていた、Stephen Sauvestreがてがけた建物。コンクリートの建物で、カカオと砂糖が混ぜられてチョコレートとなるまさに聖域な場所でした。ここでも、 コーヒータイム。インスタントのいろんな種類の味のカプチーノを配ってくれました。ほんとに広いので、ちょこちょこある休憩所は助かります。
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さっきの運河を橋で渡ります。家族連れの人たちもたくさんいました。
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最後は、企業の商品や活動がパネルで紹介されてるところを通っていきます。
そして、最後には、袋いっぱいのチョコレートのおみやげ付き。普段は入れない、企業の私有地なので、こうやって見学できってとっても楽しかったです!忙しない、ぎすぎすした、大企業っていうイメージが崩れるような、緑いっぱいで視界が開けて広く、穏やかな雰囲気で、建物だけで印象ってこんなに変わるんだと驚きました。日本でも大人の社会見学ってことで、工場やダムの見学は話題になったりしますが、こういう歴史的な建造物をしっかりと保存して、一般の人たちにも公開するっていうのは企業のアピールにもなるし、フランスの始めたこの文化遺産の日っていうイベントも有意義なものでした。フランスの人たちみんな楽しみにしてるみたいで、月曜日には会社でもどこどこに行ってきた、なんて話してたり、文化を大切にする気持ちが根付いてるように感じました!
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駅からの道のりで見つけた、素敵な公園。
次回はパリに戻って、このイベントの続きを書きます。

2014年9月13日土曜日

江戸のダ・ヴィンチ!随一の数奇者、小堀遠州の庭園と茶室が現代に甦る。

東海道の旅、まだまだ続きます。
前回のクレマチスの丘から、名古屋方面に下って、島田に来ました。
2011年にアニメも放映された、漫画「へうげもの」で初めて見たときに衝撃を受けた印象が強くてずっと気になっていた、小堀遠州。彼が手がけた庭園と茶室が復元されている場所が帰り道にあるのを知ったので、わくわくしながら訪ねてみました!!
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三大茶人の一人、小堀遠州(政一)は、天正七年(1579)に近江(現在の滋賀県長浜市)に生まれました。父親の正次が、豊臣秀吉の弟の秀長の家老となったことで、遠州は子ども時代、秀長のお城があった大和国郡山(奈良県大和郡山市)で過ごし、幼い頃から書道、和歌、茶道などを学んでいたようです。
天正16年の遠州が10才の時、大和郡山城内で開かれる秀吉の歓迎茶会のために、秀長は千利休を呼んで茶の湯を学んでいたときがありました。遠州はそのときに初めて利休の姿を見て、茶の湯に目覚めることになったそうです。その後、15才で利休の弟子であった古田織部に師事します。秀長亡き後、徳川幕府のもとで大名となり、徳川三代将軍家光の茶道指南を務めることになり、武家茶を確立していきました。
利休から織部に続く独創的な茶の湯を受け継ぐとともに、王朝文化を融合した優美な、遠州独自の『きれいさび』を創ります。新しい安定した時代に合ったもので、「もてなし」の心を大切にするような、現在の茶道の礎となってます。
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また、27歳のときに後陽成院御所の作事奉行に任じられたことで、建築家としての才能も発揮してきます。作事奉行というのは、幕府や宮廷の建築や庭園などに関わる仕事を統括する役割の人。慶長13年(1608年)に駿府城も担当し、その功績が認められて従五位下遠江守というのを授かり、『遠州』と呼ばれるようになりました。
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この庭園は、後水尾上皇の院御所である仙洞御所の東庭を遠州による造園当時のまま復元した、池泉回遊式庭園というもの。京都に現存している仙洞御所の庭園は、後水尾上皇によって改造されたものらしいです。どう改造したのか比べてみるのも面白かも。今度は、京都御所にも行ってみたいです!
それから、行事奉行として関わったものは、桂離宮、二条城、名古屋城!、伏見城、大阪城、などなど、当時の代表的な建築物のほとんどじゃないかなってくらいです。
お茶室、縱目楼(しょうもくろう)にも入ってみました。
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この書院は、石清水八幡宮の瀧本坊の復元。遠州と親交のあった、文化人で高僧の松花堂昭乗が住まいにしていたところ。松花堂昭乗は、四つに仕切られたお弁当箱に盛りつけられた懐石料理、松花堂弁当の由来になった人でも有名。
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そして、書院から続く、なんと空中庭園ならぬ空中茶室!
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もともと瀧本坊は山の中にあったので、茶室のための庭園が作れず、縁側を飛び出させたのだそう。外の景色を見ながら涼しい風にあたって、気持ち良さそう。今は庭園が見えてるけど、当時はこれが崖の上にせり出して作られていたのだから、京都を見下ろした見晴らしも素晴らしかったんだろうなって思いました。
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遠州が余生を過ごした、伏見奉行屋敷の復元した鎖之間では、お菓子とお抹茶もいただけます!
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お茶碗は、遠州好みの志都呂焼というもの。静岡県島田市金谷は、「遠江国質侶庄金屋郷」と呼ばれていて、その地名から、志戸呂焼(しどろやき)と名付けられたそう。志戸呂焼の特徴は、この地方で採れる「丹石」(にいし)と呼ばれる鉄分を多く含む赤い石が釉薬に使われてること。遠州七窯の一つ。
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室内からの眺めはこんな感じ。
遠州は44歳のときに、伏見奉行という役職につきました。その立場から、海外の情報もたくさん入ってきて、茶道具や庭作りにも西欧文化を取り入れていたのだそう。
ワインをたしなみ、海外へ自分でデザインした茶道具を注文したり、寛永文化サロンの中心人物として、行政だけではなく一目置かれた存在のお洒落な遠州。晩年はお茶事に明け暮れ、生涯で400回、大名から町人までお客はのべ2000人と言われてる!生き様がかっこよすぎて、ますます気になってしまう。
このお茶室と庭園は、静岡県島田市にある、お茶の郷というところにあります。予約もいらないし、ふらっと立ち寄れるところなので、お茶とお菓子で休憩がてら行ってみてくださいー


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2014年9月9日火曜日

映画「イヴ・サンローラン」にも登場した芸術家に再会!長泉にあるベルナール・ビュフェ美術館 

前回書いた、ヴァンジ彫刻美術館のある、クレマチスの丘の続きです。クレマチスの丘は、大きく二つに分かれていて、こっち側のエリアには、もう一つ美術館と文学館があります。ヴァンジ彫刻美術館からは無料シャトルバスも出ています。歩いてももちろん行ける距離。
前回の記事はこちら→http://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/2560
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ところで、半年前にこのブログで紹介した、ファッションデザイナー、イヴ・サンローランの伝記映画『イヴ・サンローラン』が、日本でも公開されて間もないですが、もう観ましたか?ブログにも書きましたが、サンローランの有名な肖像画を描いた、フランス人画家のベルナール・ビュフェが映画に登場し、公私のパートナーであったピエール・ベルジェとサンローランの出会いの場面を盛り上げる重要な役柄を担ってました。肖像画は現在パリの、ピエール・ベルジェ、イヴ・サンローラン財団の保存している、サンローランのアトリエに飾ってありました。これ↓
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8年もの間パトロンであったピエール・ベルジェが見出した天才画家、ベルナール・ビュフェの美術館が、実はここ日本の静岡、長泉のクレマチスの丘にあるのです。

この美術館は、スルガ銀行第三代頭取の岡野喜一郎が1973年に創設。戦後の1950年代、岡野氏がまだ20代後半のとき、初めて観たベルナール・ビュフェの絵画に感動して、次々と作品をコレクションしていくことに。油彩、版画、ポスターや挿絵など、なんとそのコレクションは2000点以上にもおよび、ベルナール・ビュフェ美術館を創ることを決意。そして現在の美術館のビュフェの収蔵作品は世界一を誇っている!!



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去年は40周年を迎え、大改装。新しい美術館かと思いました。
コレクションしているビュフェの作品で企画展を開いているのと同時に、別館のギャラリーでは、『日本の原風景を描く』と題して、歌川広重の「東海道伍拾三次」を取り上げています。「東海道伍拾三次」を順に並べ、またその作品からインスピレーションを得た現代作家、イケムラレイコ、山口晃、竹崎和征の作品を展示してました。
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江戸時代の旅人に成りきれるコーナー。
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結んだときに赤富士になるおみくじ。かわいいので持ち帰りました。
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また、地下には、ビュフェこども美術館があります!ここもとってもかわいくて、ちびっこたちが遊べるスペースになってます。ビュフェ美術館も、ヴァンジ彫刻美術館も、こども向けのワークショップも充実してて、すごく楽しそうでした。
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それから、文学館というのがここ。
沼津、三島で育った、井上靖の直筆原稿や写真などが展示されてます。井上靖の中学の後輩だった、前述の岡野喜一郎が1973年に建てた文学館です。
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そして、文学館とビュフェ美術館の間には、TREEHOUSEというカフェとショップもあって、美術館グッズや、面白いアート本、それにこども向けの絵本やおもちゃもいっぱいあって楽しかったです!
クレマチスの丘は、名古屋からも東京からも車で日帰りで行けて、週末遊びに行くのにぴったりだと思います。それに、電車で行く場合でも、JR三島駅からクレマチスの丘まで、無料シャトルバスが出ているという至れり尽くせりなサービスまで。
8月はあまりお花も咲いてなかったのですが、春や秋の方がもっともっと素敵なお庭が見れると思います!


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2014年9月5日金曜日

箱根の山も一望できる庭園が魅力!!緑いっぱいに包まれてるヴァンジ彫刻美術館

長い夏のバカンスも明けて、パリはすっかり涼しく秋もようです。私は、3年ぶりに日本の蒸し暑い夏を体験して、始めの数日の夜は全然眠れなかったです。パリに戻ってからは、もう寝るときは毛布被ってます。
今年は、バカンスを全部、日本滞在にあてたので、観光客のように毎日出かけて、いろんなところを訪れました。そこで面白かったところをいくつか紹介したいと思います。

まずは、“パリの公園を思い出したよっ”、パリにも何度か訪れている絵描きさんに教えてもらってから、ずっと行ってみたいと思っていたところ。クレマチスの丘にある、ヴァンジ彫刻庭園美術館。静岡県の長泉町というところにあります。


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クレマチスの丘には、3つの美術館と文学館、それにレストランやカフェ、ショップも併設していて、一日中ゆっくり遊べる複合アート施設。その中の一つにあるのが、ヴァンジ彫刻庭園美術館。ここはジュリアーノ・ヴァンジの彫刻作品を常設コレクションしている美術館です。ジュリアーノ・ヴァンジは、1931年にイタリア、フィレンツェ近郊に生まれ、フィレンツェ国立美術学校で学んでいます。2002年には高松宮殿下記念世界文化賞の彫刻部門で受賞し、ヨーロッパを始めとして、日本や世界中で発表しているイタリアを代表する巨匠の一人。



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彫刻家ヴァンジの作品を展示する、ということに特化した美術館というのもとってもめずらしい。それに、それぞれの作品の展示場所や照明なども、ヴァンジ自身の意図を反映したものとなっているというから、美術館全体でヴァンジの見ている世界を実際に体験しているよう。


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そして、様々な見所のなかでも私が好きなのは、美術館の周りを囲んでいる庭園!!そこにもヴァンジの彫刻作品がいたるところに点在しているので、見つけるのが楽しいです。贅沢なまでに自然がいっぱい広がって、見渡す限り緑!おじいちゃんに連れられてきたちびっ子たちがはしゃいでたり、赤ちゃんを抱っこしてお散歩してるお母さんや、子ども5人の大家族まで、家族連れを多く見かけたから、居心地がいい美術館なんだろうなって思います。



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一面に広がっている芝生は、確かに日本の公園ではなかなかなくて、パリっぽいかも。都会の喧騒から離れて空気もいいし、ベンチでゆったりお昼寝しちゃいたくなってしまう。

庭園の奥には、葉っぱに包まれたすんごく素敵なカフェが隠れてました!


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美術館の中には常設だけではなく企画展のスペースも設けてあって、今はドイツを拠点としている彫刻家のイケムラレイコの『PIOON!ぴょーん』展でした。2006年にもここヴァンジ彫刻美術館で個展をしていて、2回目となる8年振りの本展は、題名からも感じるように、うさぎのかたちをした彫刻が多くいました。一番の見せ場は、巨大な観音様のうさぎさん。


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展覧会の様子を見ることができる映像があったので、美術館の様子も分かると思うのでぜひ見てみてください。

[youtube=https://www.youtube.com/watch?v=UBqKbdj4Z4c]



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ここは入り口。ここでチケットを買う、案内所。美術館の中の様子が想像できなくて、秘密の森のヴァンジの世界に足を踏み入れるのにどきどき。


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入り口のすぐ近くには、杉本博司氏がディレクションした写真美術館もあります。

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もう少し奥に行くと、日本料理のtessenがあったので、ちょっとカフェ休憩。1階では、川内倫子の 写真展、震災後すぐに訪れた石巻や気仙沼で撮った作品、「光と影」展が行われてました。

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まだまだクレマチスの丘は、大きく二つに分かれていて、駅に近いほうの、ヴァンジと写真美術館。そして、もう少し離れたところには、また美術館と文学館、ショップがあるので、それはまた続きに書きます。



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