2013年4月25日木曜日

世界中から愛されまもられてきた、パリのオートクチュールの歴史 PARIS HAUTE COUTURE

ここ最近、パリのあちこちで、モード関連の展覧会がいっぱい催されてますが、一番人気は、誰にでも無料で観覧できるパリ市庁舎で行われている、パリ オートクチュール展!いつ行っても長い列が入り口からのびていて、表示では1時間待ちになっていましたが、だいたい30分弱で入れました。
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展示は二階から、オートクチュールのアトリエの写真や資料の展示で始まります。次に一階には、パリモード美術館Galliera(ずっと工事中で閉館)が所蔵するドレスとアクセサリーが100点近くも展示してありました。
1)パリで始まったオートクチュールの歴史

100年も前から、モードはフランス経済でも大きな役割を担っています。それは、デザイナーたちだけでなく、専門技術を持ち、創造性豊かな職人たちが伝統を守り続けてきたおかげ。パリの服飾関連の会社は7600あり、ここで約6万人が働いています。ちなみに日本では約3万7千人が服飾関係で働いています。フランスの全人口が日本の半分なことから考えても、パリのモード関係の仕事をしてる人の割合がとっても多い!

現在20のメゾンがオートクチュール(高級既製服のプレタポルテと区別される、完全オーダーメイドの一点もの)としてパリに存在してますが、パリクチュール協会の基準をクリアしてるのはその中でもたった12メゾンだけ。1858年にCharles Frederickがクチュールのお店を開いたのがパリの150年のモードの歴史の始まり。1911年にパリクチュール協会が設立され、1945年には協会が年に二回日程を定め、コレクション発表の取り決めをしたのが、今のような、世界中各地のファッションウィークにつながってる。
 
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 Jacque Boyer 1907 ©Jacques Boyer / Roger -Viollet
百年も前のオートクチュールのアトリエの様子だけど、あまり今と変わってないところは驚き。でも、マネキンはずいぶん違う。
 
もともと上流階級の人たちが集まっていた、チュイルリーとグラン・ブルバールの間の通り、rue de la Paixに、19世紀オートクチュールのメゾンがつぎつぎと開店して、モードリュクスの中心に。大きなホテルも立ち並び、国際的で裕福な人々で溢れ、20世紀の初頭その流れはマドレーヌ広場まで広がっていきました。
その後、1909年ポール・ポワレが住宅地だったシャンゼリゼに移ったの契機に、どんどん西に広がり、今では高級ブティックが軒を連ねるサントノーレ通りや、モンテーニュ通り も同じころに、大きなホテルや劇場が建設されるようになって、少しずつメゾンが移ってきて、世界でも有数な通りとして確立。
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Madeline Vionnet 1924 ©Collection Musee Galliera
新しい街はこれからでも作っていくことは可能かもしれないけど、伝統や歴史を作ることはできない。歴史が一番古いのに、今でも最新のモードが集まる街、というところがパリの凄みだと思いました。
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Christian Lacroix 1991-92©Collection Musee Galliera
 2)パリの貴重な職人の技術
 17世紀ころから、パリの職人の技術は目覚しい発展を遂げて、ヨーロッパ全土に知られることに。19世紀に、メゾンそれぞれが職人の技術ごとにパリの各地にアトリエを構えるようになり、1990年職人たちはその技術を、"metiers d'art"(工芸)とすることによって、国やメゾンから保護されて、価値を安定させています。
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Pierre Balmain  1955-56©Collection Musee Galliera  ©photo Olivier Saillant 
たとえば、刺繍では、シャネルとコラボレーションもしていたり、その世界のシンボル的存在のLesageが有名。パリには他にも、6つ大きな刺繍のアトリエがあり、一着のドレスを複数のアトリエで部分的に刺繍することがよくある、という話が表しているように、パリの職人たちみんなでオートクチュールの世界を支えているのは、とても素敵なこと。
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  Christian Dior 1952 ©Collection Musee Galliera

でも、これだけ護られてはいても、アトリエや職人たちの減少も深刻。羽毛細工のアトリエは、1919年に425あったのが、現在では3つだけ。それも主に、劇場で使う衣装のためで、たった一つ、la maison Lemarie だけが、オートクチュールのために働くアトリエ。それに、プリーツ加工を施すアトリエは、50年代には150あったのが、今は20。それも、ほとんどが機械で行っていて、4000以上の型を保有し、すべて人の手で作業してるアトリエは Lognonだけ。
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Balenciaga  1967-1968 ©Collection Musee Galliera
先月、日本の伝統技術に言及した、SUZUSANの記事を書きましたが、後継者不足が深刻なのは日本だけじゃくフランスでも同じ。そのため、その職人たちの地位の確立や保護、そして充実した学校制度など、真剣に取り組んでいる様子でした。

今回の展示は市の美術館を使って、多くの協力を得られて無料で開放してるのは、すごいことだと思います。今は、ファストファッションであふれている世の中ですが、パリは街全体で伝統あるモードの世界に誇りを持ってて、そして何より愛してるのが感じられて、とても羨ましく思いました!
写真はすべて許可を得て掲載しています。 
 "Paris Haute Couture"Hotel de Ville - Salle St-Jean7月2日まで10時〜19時(日曜と祝日は休み)
無料 
Hotel de VilleSalle Saint-Jean5 rue de Lobau. 75004 Parisメトロの駅 : Hotel de Ville, Rambuteau, Pont-Marie, Saint-Paul
 

2013年4月19日金曜日

子どものためだけのお菓子じゃない。二色のマシュマロ Pain de Sucre

イースターも過ぎて、チョコの話題も下火になってきたのに、なぜか今ちょっとアトリエで人気なのが、手作りのとろとろのマシュマロが中に入ったチョコレート。どちらかというと、マシュマロのチョコレートコーティングかな。マシュマロはフランス語で、guimauve 。チョコがけはなぜかくまさんの形をしていて、どこのスーパーでも手に入る、フランスでは定番の子どものお菓子。だけどちょっと甘すぎるから、手作りのときはミルクチョコではなく、ブラックチョコを使って。マシュマロといえば、バーベキューで食べるちょっと焦がして食べる美味しすぎる!でも、マシュマロ好きにははずせない、かわいくて、これまであじわったことのない美味しさのまた食べたくなる二色のマシュマロがあります!!
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パリのマレ地区の、ポンピドゥーセンターの通りをまっすぐに行ったところにあるケーキ屋さん、Pain de sucre。ウィンドウからも、おもちゃみたいにカラフルでかわいい、二色のふわふわマシュマロが、飾られてます!
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店内はこじんまりとしてて、ケーキがずらっと並んでます。もちろんケーキもおいしい!!
ちょっと小さいけど、食べるところも用意されてて、我慢できなかったので店内で食べてきてしまいました。お店の外にもテーブルとイスがあって、道行く人を眺めながらも食べれます。
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今回選んだのは、頭のてっぺんにささったリキュールのスポイトを食べる前にぐっと押してしみこんだところでいただく、ババ。ケーキ屋さんにはどこにでもある、フランスでも定番のケーキ。ケーキはふんわりしっとりで、お酒の効いてる大人のケーキ。
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それに、これも定番、モンブラン。 栗が大好きすぎで、悩んだ挙句にモンブラン食べたくなります。下のクッキー生地が固すぎて、お店で出してくれた使い捨てのスプーンを二回も折ってしまいました。お家で食べた方がよかったかもしれないです。でも味は格別!!
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そしてそして、マシュマロは、ピスタチオとカシスのマシュマロと、黒ごまとホワイトチョコのマシュマロ!!一つずつのフレーバーを、味わっても、一緒に食べても、美味しすぎます!!
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他のフレーバーも試してみたいし、また絶対買いに行きます!!
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Pain de sucre
14 rue Rambuteau
75003 paris
火曜日と水曜日はお休みです。
10h-20h

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同じ通りのとなりのとなりには、Pain de sucreのパンとお惣菜のお店もあります!!もともとは、ここでケーキも売っていたのですが、数年前に新しいお店にお引っ越し。
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ここもオススメ。パンもおいしいし、ちょっと変わった面白いお惣菜にも出会えます。
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今回選んだのは、三色のエクレア。甘いチョコレートのものではなくて、形はエクレアでも、中に入ってるのは、人参やほうれん草などの野菜のディップ。こういうの楽しい!!
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もちろんバゲットなど、いつものパンもたくさんあるので、お惣菜と一緒に食事パンも買って、もうお昼は完ぺき。

2013年4月17日水曜日

気分を楽しくしてくれるBlessのアイテムに囲まれて日常をおくるアパートプロジェクト Bless Home Paris

去年の春頃ベルリンに行ったときに、Bless Home に滞在した記事を書きました(前の記事)が、パリでも同じコンセプトで、ファッションウィークの期間中限定で、Bless Home Paris のプロジェクトをしてました。今回で2回目!
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無造作にイスに服やバッグが置かれているから、本当にこの家の人のものに思ってしまう!掛けられてる服も床に置かれてる靴もほとんどがBless。
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Bless Homeというのは、”Blessのコレクターのお家”、というコンセプトで、Blessのアイテムでデコレーションしたアパートに住みながら、ショップとしてお客さんにも見せるというもの。
ベルリンのほうは、Bless Home のためのアパートであるのに対して、パリの会場になるアパートは、もともと実際に人が住んでるところで、もちろん他のブランドの家具や生活用品もたくさんあります。でも、個性が強いのになぜかどこにでもしっくりなじむのが、Bless。私はBlessのアイテムをある程度は知ってるけど、全く知らない人がこのアパートに来たら、どれがもともとあって、どれが商品で買うことができるか、分からないんじゃないかなと思うと、面白い!
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Blessのベッドカバーはどれも素敵。全種類ほしい。
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時間ぎりぎりにいってしまったのもあって、家主さんは夕飯の準備をしながら迎えてくれたのは、ちょっと驚きました。でも、Blessのアイテムでいっぱいのアパートで暮らす、っていう特別な状況を、日常の生活習慣を変えないことで、自然に見せていました。
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このプロジェクトの間は、いつものショップはバイヤー向けのショールームになっています。その間、ショップにあったアイテムたちを選んでアパートに引越しさせて、Bless Home に変身させてるんです。
前回、2012年から始まった、こ のプロジェクト。一番最初のBless Home Paris の様子も紹介します。
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選んでるアイテムは違っても、どっちの部屋もぴったりなじみすぎてるけど、全体としてみると、Blessって感じがします。毎シーズン増えてくアイテムのどれを選んで、つぎはどこのアパートをデコレーションするのか楽しみです!!
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モンパルナス墓地がバルコニーから一望できるアパートでした!こんな風景見たことなくて、かなりびっくりでした。アパートに囲まれてるお墓たちだけど、なんだか小さなお家がいっぱい密集してるようにも見えてかわいい。

2013年4月12日金曜日

Henrik Vibskovのデフォルメされた日常の変わった世界を体験できる、パリで初めての個展!NECK PLUS ULTRA

以前紹介したパリの老舗デパートにあるギャラリー・ラファイエットのギャラリー、 Galerie des Galeriesで新しく始まった、Henrik Vibskov のパリで初めての個展NECK PLUS ULTRAのオープニングに行ってきました。(ギャラリーについての記事はこちら

Henrik Vibskovといえば、いつもコレクションのショーのときの面白いしかけ、が私は好きで楽しみにしてるのですが(詳しくは以前紹介したときの記事12)、デザイナーの仕事以外にも、たくさんアート作品を作ってる、マルチアーティスト。

その彼の個展とあれば、絶対楽しいはず!と少し早めに行ったつもりが、すでにたくさんの人でいっぱいでした。

入り口を抜けていって、ぱっと目に付くのは、黄色い生物の標本箱。もふもふしてそうでちょっと触ってみたいようなかわいいイモムシたち。
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その横には、ちょっとしたショップもあったり。帽子、バッグや本などグッズをギャラリーで買うこともできます。
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それから、ゆらゆらして目が回る、デフォルメされた人物画。シャボン玉に映るゆがんだ身体を見たときを表現してる。
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今回の個展の題名になってる、NECK PLUS ULTRAは、神話に出てくるラテン語nec plus ultra(この先には何もない) をもじったもので、前回の2013AWコレクションThe Stiff Neck Chamberからもつながってます。コレクションの様子も少し紹介します。
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真っ黒のフラミンゴのながーい首が垂れ下がってるショー会場。そのまわりをモデルさんたちがぐるっとしてました。反対側にいるときは、ジャングルの中、または檻の中にいるみたいでした。カラフルで目を惹くプリントと、絶妙なカラーのバランスがかわいいニットたち。写真にうまく撮れなかったけど、モデルさんたちそれぞれちょっとずつ違った柄が編んである靴もよかった。ほしい!

ギャラリーに戻りますが、このフラミンゴたちもギャラリーで展示されていて、その間を通って行くことができて楽しい!この日は、コレクションのショーのときも登場していた、顔まで覆った黒子たちが、操り人形を携えて登場。
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彼女たちについて行くと向こうには、風のトンネル!
 
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目には見えない”風”を、視覚化した、風を纏ったように感じながら通れるトンネル。
それから、わたのいっぱい詰まったダムから勢いよく放出されて今にもどっとあふれてきそうな壁を背に、人形たちのパフォーマンス。
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これは、ふわふわしたぐるぐる巻きにされた極太の毛糸が、交互にあがってさがったりするインスタレーション。
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デザイナー本人も登場です!!
Henrik Vibskovの、ちょっと変わった、二癖もある驚きいっぱいでいつも楽しいファッションショーの雰囲気をそのまま味わえる展示でした。
お買い物のついでにぜひ遊びに行ってみてください!!
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ギャラリー・ラファイエットの2階
40, bd Haussmann
75009 Paris
http://www.galeriedesgaleries.com入場料は無料  月曜日休みです
5月4日まで!

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人がいっぱいで動けない様子!

2013年4月10日水曜日

正方形の真っ白い舞台で、心地よい時代のかおり。ヨウジヤマモト2013AWパリコレクション

すっかり遅くなってすみません!!

もうお花見の時期も過ぎて、夏に向けてどんどん暖かくなってくところだと思いますが、今更ながら先月のヨウジヤマモトのパリコレクションのショーについて書きます。

メンズコレクションは何回かレポートしたことがありますが、(前回の記事1.2)ウィメンズコレクションは初めてでとっても楽しみにしてました。そして会場も、初めての場所。パリの南東の端っこにある、ぐるぐるしてしまって、迷ってしまうくらい大きなイベント会場、POPB(Palais Omnisports de Paris Bercy)の一画でした。
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ここ最近のコレクションとはちょっと違うなってのがこの会場の雰囲気からも伝わってきました。そして、ほとんどが全身黒。これぞ、ヨウジヤマモト!みたいなものが多く、
80-90年代の頃の時代のショーにタイムスリップしたような感じもしてくる。それは、四角い舞台だったからなのかもしれないけど、これまでのコレクションを総括して、昇華させて、再構築してるかのよう。
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BAOBAOのバッグがドレスになったみたいでかわいい。
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ふっと、真っ黒の中に突然現れた、浅葱色のドレス。とっても素敵な色。
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色のコントラストで対になってた二人組。光と影、みたいで面白い。
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細長くまっすぐに伸びるランウェイというものがなく、何もない白く輝いてる四角い舞台で、音楽はビートルズの流れる中、ゆったりとした空気が漂い繰り広げられるショーは、これまで映像でしかみたことがなく、想像上のものだったのに、でもなんか懐かしい感じがして、その上でやさしく包まれ心が温かくなるような心地よい気分にしてくれるヨウジヤマモトの世界が広がっていました。