2013年9月24日火曜日

建築×ファッション×彫刻! 建築家の坂茂さんとオーギュスト・ペレの建築探訪 

前回の続きで、フランス文化遺産の日の後半です。
午前中は、郊外へ行っていたのですが、午後はパリへ帰ってきました。

午前中ずっと一緒にまわっていた大学の同級生、岡崎瑠美さんのつながりで、午後からは建築家の坂茂さんも加わることになりました。坂さんは、メッスにある、ポンピドゥー・センターの分館を手がけたことでもフランスでもかなり有名な建築家。この日も、何度も声をかけられていました。

そして、坂さんは2011年にはAuguste Perret (オーギュスト・ペレ)賞を受賞しているということで、今回はパリにあるオーギュスト・ペレの建築を見に行くことにしました。

オーギュスト・ペレは、ベルギーで生まれました。パリのl'École des Beaux-Artsボ・ザールで学び、世界遺産にもなっているフランスの都市、Le Havre ル・アーヴルの再建の都市計画をはじめ、セーヌ川を臨むシャンゼリゼ劇場、L'Église Notre-Dame au Raincyランシーの教会などなど、フランスでも数多くの主要な建物を手がけています。コンクリートにいち早く注目し、ル・コルビュジェなどの建築家にも影響を与えた建築家です。

まずは、イエナ駅からすぐに見える、1937-46年に建てられたPalais d'Iena。難しくてよく分かりませんが、Conseil économique, social et environnemental(CESE)経済社会環境評議会の本拠地になっているところです。
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建物の周りを囲んでいる柱が中にも連続してるから、中にいても建物の外にいるような感覚で、どっちか分からなくなるような曖昧な感じが面白かったです。
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会議室は、外から見えた円形の形をしてます。
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秋、水、冬というタイトルのゴブラン織のタピスリーがとっても素敵!!
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この階段が面白かった!最小限に見えないように支えられてるだけで、ぐるっと柱に巻き付くようにして宙に浮いてるみたいでした。
ここの場所、来てみて思い出したのですが、去年2012年の冬に行われてた、プラダの24h MUSEUMの会場だったところでした。少しだけ写真を紹介します。
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アーティストのFrancesco Vezzoli(フランチェスコ・ヴェッツォーリ)の彫刻作品と建築家のRem Koolhaas(レム・コールハース)がコラボレーションした世界。全くの異空間に変身してました!これまでも、コレクションのショー会場にも使われたりしてる、実は、モードやアートとも関係のあるところ。
外に見える二重の柱の意味や、葉っぱの装飾、後から入れられた亀裂、新しく増築された部分の話などなど、いろんなお話を聞きながらゆっくり観てきて勉強になりました!
次に行ったのが、彫刻家、Chane Orloff(シャナ・オルロフ)のアトリエ。
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狭い道に面したこじんまりとしたアトリエで、入るために長い列ができていました。私たちも1時間くらい待って、やっと入ることができました。
1926年、ペレは、親しかったオルロフのためにアトリエを手がけ、これが初めての小さいサイズの建物になりました。同じ通りのどの家よりも窓が多く、北から入る光をたくさん取り込めるように考えられています。
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アトリエ中に彫刻作品が飾られ、建築を見に来たというよりは、オルロフの彫刻をじっくり楽しんでしまいました!イスラエル出身の彼女は、もともと服飾の勉強をしにパリへやってきたけど、アートに進み、彫刻家になったという経歴。アトリエの壁には、イスラエルの総理大臣やマティス、ピカソなどの芸術家、偉大な建築家など、実在する人物の肖像で埋め尽くされてました。
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この写真の上段の真ん中が、ペレです。彼女の作品がどれも魅力的で、すごく気になってしました!
1人の建築家をたどるだけで、次から次へと他の建築家や芸術家などつながっていって、興味がふくれていってしまい、それもとっても面白い。この日は一度にたくさんのことを見たり聞いたりしたので小さな脳みそではパンクしそうですが、図書館に行ったときにでも本を手にとってみようと思います。
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最後にポンピドゥーセンターの前で、友だちの岡崎さんと坂さん。岡崎さんは、エチオピアの研究のためにパリに滞在していて、建築にも詳しく、全くの初心者の私にいつもいろいろ教えてくれる、尊敬できる頼れる美人研究者。彼女がパリに来てくれたおかげで、パリの生活もずっとずっと楽しくなりました!
坂さんは今は他の大学で教えているけど、以前は私たちの大学の教授だった方。私は授業を受けたことはなかったけれど、坂さんの話を聞きながら歩いたり、レストランでもたくさん話していると、大学生に戻ったみたいでとーっても楽しい建築探訪でした!!そしてなんと、坂さんはいつも、東京でオートクチュールのアトリエを開いているお母様の作品を着ているそうです!!ファッションと建築はやっぱり切っても切れない関係。ますます建築熱が高まってきた気がします!!

2013年9月19日木曜日

フランス文化遺産の日は、140年前のチョコレート工場を探検。Chocolaterie Menier

先週末のフランスは、Journée de patrimoine 文化遺産の日で、普段は一般公開されていない歴史的な建造物を、年に一度だけ公開してくれる日でした。私は今年初めて参加しました。
今年は、パリに滞在している建築に詳しい研究者の友だちが誘ってくれて、140年前のチョコレート工場を見学しに行ってきました!
パリの郊外行きの電車、RERに乗って20分、パリとは全く違う景色の広がる、静かな小さな町Noisielに着きました。木が生い茂る長い遊歩道を通り抜け、少し迷いながら住宅地を過ぎると、人の流れが見えてついて行ったら、もうすでにたくさんの人たちが列になっていて、この町の人たちには有名なスポットみたいでした。
ここは、Menierという1816年に創業したチョコレートの会社の1872年に建てられた工場でした。もともとは薬としてカカオパウダーを売っていた製薬会社で、その後、タブレットのお菓子のチョコレートを作るようになりました。1988年にスイスの大企業Nestlé(ネスレ)のグループ会社となり、1996年からこの場所がNestléのフランスの本部として使われるようになりました。今でも、Menierのチョコレートはどのスーパーに行っても置いてあります。黄緑色の背景に女の子が描かれているクラシックなパッケージで気になるチョコレート。
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Nestléの敷地はとっても広いのですが、その中でも、カラフルでとってもかわいい目を惹くのがLe Moulinと呼ばれる、カカオの豆を砕くための建物。世界で初めてレンガを積んでいくのではなく、鉄骨を組んで作っていった建物で、国の歴史的建造物に指定され、ています。時計や屋根の下にも、とっても素敵な装飾がされてます。チョコレートのための建物ががこんなにかわいくて、夢があって、わくわくさせられます!
少し歩いて、続く次の建物は、La Halle Eiffelと呼ばれるあのパリのエッフェル塔を作ったEiffelが手がけたものです。
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アーチの天井の真ん中から差し込む光でとっても明るい、チョコレートを保存するための場所だったところで、ここではNestléらしく、コーヒーを配ってくれました。朝早かったので、宣伝のためだったとしても、こういうのってうれしかったです。私たちは、ココアをいただきました!P9150049
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その地下では、Nestléの歴代の広告の展示でした。赤ちゃんの粉ミルクから始まった会社なだけに、赤ちゃんの絵ばかりで、かわいかったー!
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中庭を通りすぎていくと、
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さっき見た、カラフルな建物の地下に辿り着き、そこでは、当時使われていた機械が展示されてました。全く仕組みは分からないのですが、こんなに大きく難しそうな機械じゃないと、チョコレートって作られないのかとびっくり。
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そこを出ると、こんな運河が広がっていて、向こうには森が見えます。サイクリングしてる人たちもいたりして、パリから数十分のところにある大企業の敷地だとは思えないくらい自然がいっぱい。こんなところだったら、毎日気持ちよく仕事できそうだなって思いました。
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柱の面白い、La Cathédraleは、エッフェル塔建設ではEiffelのもとでデザインに携わっていた、Stephen Sauvestreがてがけた建物。コンクリートの建物で、カカオと砂糖が混ぜられてチョコレートとなるまさに聖域な場所でした。ここでも、 コーヒータイム。インスタントのいろんな種類の味のカプチーノを配ってくれました。ほんとに広いので、ちょこちょこある休憩所は助かります。
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さっきの運河を橋で渡ります。家族連れの人たちもたくさんいました。
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最後は、企業の商品や活動がパネルで紹介されてるところを通っていきます。
そして、最後には、袋いっぱいのチョコレートのおみやげ付き。普段は入れない、企業の私有地なので、こうやって見学できってとっても楽しかったです!忙しない、ぎすぎすした、大企業っていうイメージが崩れるような、緑いっぱいで視界が開けて広く、穏やかな雰囲気で、建物だけで印象ってこんなに変わるんだと驚きました。日本でも大人の社会見学ってことで、工場やダムの見学は話題になったりしますが、こういう歴史的な建造物をしっかりと保存して、一般の人たちにも公開するっていうのは企業のアピールにもなるし、フランスの始めたこの文化遺産の日っていうイベントも有意義なものでした。フランスの人たちみんな楽しみにしてるみたいで、月曜日には会社でもどこどこに行ってきた、なんて話してたり、文化を大切にする気持ちが根付いてるように感じました!
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駅からの道のりで見つけた、素敵な公園。
次回はパリに戻って、このイベントの続きを書きます。

2013年9月5日木曜日

パリ郊外にある、レオナール・フジタが晩年を過ごしたアトリエ兼住居を訪ねる

今年2013年は、レオナール・フジタ(藤田嗣治)がフランスに渡ってから、100年の記念の年。日本では各地で、さまざまな展覧会が企画されていたようですが、みなさん行きましたか?私は、2006年に東京国立近代美術館で催されたレオナール・フジタ生誕120周年の展覧会、「パリを魅了した異邦人藤田嗣治展」で初めてフジタの作品に出会い、フジタの描く、子どもの絵に惹かれました。そして、モディリアーニやピカソと交流があり、パリで活躍していたその日本人画家は、晩年にフランス国籍を取得したということを知ったときにも、かなり衝撃を受け、絵画だけじゃなくて、その人生にも興味が湧きました!!パリに来てからも、フジタ、はフランス人にとって、一番有名な日本人の名前ってことも分かって、ますます気になってました。
そんな、レオナール・フジタが晩年を過ごしたアトリエ兼住居、MAISON ATELIER FOUJITAがパリ郊外にあり、今でも大切に保存され、無料で公開されているので、週末を利用して訪れてみました。
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パリの、郊外行きの電車RERとバスに乗り継いで行きます。詳しくはこちらへどうぞ↓。
パリから、2時間くらいはかかります。バス停からは、ちょっと分かりづらいのですが、歩いて5分くらいで上の写真のお家に辿り着くことができます。バスの車窓からも分かりますが、周りには何にもなく、人もほとんどいないような、見晴らしのいい静かな小さな村の一画にこじんまりとたたずんでいます。
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門を入ってから、右に行くと、受付があります。見学しに来た、と係りの人に伝えると、まずは小さなギャラリーに通してもらえます。そこでは、フジタの当時の服装の展示がされてました。
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フジタは、テーラーで働いていた経歴もあり、自分の服は自分で作っていた、というのには驚きました!もちろん作業服も、道具入れも、何でも自分のオリジナルのものを作って使っていたようです。それから、隣の部屋では映像も見せてもらえるのですが、当時のパリの街でも、フジタのスタイルはお洒落でかなり目立っていました。藤田は普通、FUJITAと書きますが、あえて、FOUJITAと使っています。FOUは、バカな、狂った、という意味ですが、その名前が表しているように、映像では、おどけて、まわりのみんなを楽しませているフジタの様子が映されてました。
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家の周りのお庭も広くて、すがすがしいし、パリから少し離れてこんな緑いっぱいの静かなところに住んでいたのかぁって、想像してみたり。
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ここが、お家の裏側。係りの人が連れてって案内してくれるのですが、日本語のオーディオガイドも用意されていました。
1階は、キッチンとダイニング。アンティークのキッチン用品や手描きのタイル、蚤の市へ行って自分で集めてきた、温かみのある優しいものであふれていました!
2階は寝室と、リビング。ここにも、アンティークのものがたくさん飾られ、手作りのクッションカバーや、木箱が素敵でした。寝室にはお人形が置かれていて、ランバンの子ども服を着せてあるのもありました。
3階の屋根裏が、アトリエになっていました。当時のそのまま残されていて、日本画の顔料が棚にたくさん並び、大きさのさまざまな刷毛や筆が立てかけられ、エスキース帳やキャンバス、それに服を作るための型紙や鞄もおいてあったりして、フジタがひょっこりやってきてまだ作業を続けていそうな雰囲気でした。フジタが壁画を手がけた、ランスの礼拝堂の模型と、その習作もありました。まだ行ったことがないので、いつかランスも行きたいです!
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土曜日 14時~17時
日曜日 10時~12時半、14時~17時半
予約なしで、無料で入れます。受付をすませてから、オーディオガイドを借りて見学してください。