2014年5月27日火曜日

今年の真夜中の美術館めぐりは、グラン・パレでビル・ヴィオラの大回顧展!La nuit des musees

毎年恒例になっている、真夜中に美術館が無料で開放されるイベント、La nuit des musees 美術館の夜ですが、今年は、パリの真ん中のセーヌ川のほとりにある、グラン・パレに行きました。3月からすでに始まっていた、ビル・ヴィオラ展にどうしても行きたかったからです。グラン・パレはとっても広くて展示室をいくつも持っているので、同時に3-4つの展覧会を催しています。それぞれ入り口も別々になっているので、どこで何をやっているのか確かめていかないと、ぐるっと一周しないとたどり着けないってことにもなるので注意です。数時間並ぶのを覚悟で1時間半前に着いたら、誰もいなくて拍子抜けしてしまいました。
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 The Dreamers (détail), 2013 Madison Corn, Collection Pinault, Photo Kira Perov
ビル・ヴィオラのことは、私の世代以上なら知ってる人は多いと思います。大学生のとき森美術館の学生メンバーに入会していた私は、2006年のビル・ヴィオラのアジアで初めての大規模な回顧展だった、『はつゆめ』展に一人で何度も通っていました。現在は学生メンバーは廃止されてるようですが、入会金5000円で美術館へ何回も行けて、イベント招待やいろんな特典があってお得なシステムでした。大学で映像の撮り方や編集の方法を教わったことで、中高生の頃はほとんど体験したことがなかったビデオアート、メディアアートに、すごく興味を持ち始めたころだったので、この展示はとても印象に残っています。見たことのない新しい手法(とは言っても、作られた年代は、70-90年代のもあったので、私が知らなかっただけ)を使って、恐ろしくなるほど死の世界を感じて衝撃を受けました。それに、ビデオを見てるのに見てないような、瞑想しているような気分がしてくる、何とも奇妙な体験でした。
[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=Jg19GwNCJU0]
ビデオの展示は、最初から最後まで全部見ていると長いし、疲れるので、見たいものを順に選びながら進みました。今回の展示では、作品の名前、年代などのキャプション以外の説明はありませんでした。必要最低限にして、説明されすぎることによって、作品と直接向き合う機会を失わないように、そして各々が好きなように動きまわれるようにする、というビルとパートナーのキラの配慮からなのだそう。私は、時間かかってしまうのでいつも会場ではあまり説明を読まないで、見終わってから調べる方なので、解説文についての意図を考えたこともなかったです。それに彼らは、アートの批評は、解釈されすぎて、分析されすぎる傾向があるという理由で、あまり気にしないのだそう。

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 Ascension, 2000 Photo Kira Perov

特に10年前の記憶が今でも鮮明に残っていたのは、最後に展示されていた『Ascension』。水の中に人が落ちてきて水面に上がっていく、というのをスローモーションで見せている作品。森美術館では、水中を見立てた真っ暗な広い部屋に、とっても大きなスクリーンが4-5つくらい設置されていて、ランダムに人が落ちてくる、というものだったと思います。今回はスクリーンが一つだったのですが、メディアアートは特に、展示の方法で別ものに変化するのが面白いです。何も見えないので落ちる瞬間をとらえるのは難しく、いきなりバシャーンという音がしてびっくりして振り返ると、キリスト降臨のようなまばゆい光のしずくに包まれた人がいて、彼がゆっくり水面に上っていく=天に上っていくような様子だけを毎回目にするようになります。その水の中の光が本当に美しいのですが、ビルの作品では他にも水を使った作品が多くあります。それはビルが休暇で訪れた湖で溺れたとき、生と死との狭間で「今までの人生の中で最も美しい世界」の風景を体験したことにつながっています。
[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=Ihoo3Z01paU]

今回初めて観た作品で面白かったのは、『Three Women』母親と娘二人と思われる三人の女性が、水の壁の粗い粒子の向こうの世界から、高画質のこっちの世界へやってきて、また戻っていく、という作品。高性能のカメラと、80年代のカメラを同時にまわして撮ったものなのだそう。
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Bill Viola, Fire Woman, 2005  Collection Pinault, Photo Kira Perov
それから、水と対照的な、火を使った、『Fire Woman』もものすごかったです。湖を囲む森の火事のような、暗闇の中で8メートルの炎の壁を背景に、女性が水にゆっくり後ろ向きに倒れていく作品。最後、倒れて水中に消えていく女性を追いかけるように、水面がズームアップされていき、そこにはどろどろの油膜のように炎のゆらめきが映りこみ、惹きつけられ吸い込まれそうで恐ろしかったです。

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Going Forth By Day (détail), 2002, « First Light » Weba Garretson, John Hay, Collection Pinault, Photo Kira Perov

ビル・ヴィオラは、ビデオアートの先駆者の一人。1951年ニューヨークに生まれのニューヨーク育ち。大学ではファイン・アートを専攻し、電子音楽を学び、ビデオに出会う。71年に最初の作品を発表し、その後ビデオ・アートの生みの親、ナム・ジュン・パイクのアシスタントとしても活動しました。80年にパートナーのキラと結婚し、その年に二人は日米文化交流のフェローシップとして日本に18ヶ月滞在、そのとき、ソニーの厚木にある研究所で、アーティストインレジデンスとしても迎えられていました。そこでは、仏教、日本の伝統文化や、最先端のビデオの技術などを学んでいた、という日本とも深い関わりのあるアーティスト。現在は、ロサンゼルスのロングビーチにある砂漠に囲まれたスタジオを拠点にして活動しています。

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初めてビルの作品を体験してから10年近く経って、今日ではビデオアートもメデイアアートも当たり前にどこでも観ることができるし、あの頃のような衝撃的な出会いはあまりしなかったのですが、10年前に遡って同時のことを思い出すことができました。ビデオを媒介にして、自分の内に潜んでいた記憶を呼び起こし、行き来できたことは面白い体験でした。これはたぶん、ただ目で観ただけではなくて、空間に一定時間いたことで全身で感じた、会場の重苦しい空気感や足で踏んでいく柔らかいカーペット、いすの座り心地の悪さなんかも合わさったことで、記憶に鮮明に刻まれたからなのかもしれないです。
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2014年5月17日土曜日

100周年を迎えたパリのシャンゼリゼ劇場!ニジンスキー、ピナ・バウシュによる『春の祭典』

ここ最近のブログでパリの1世紀前の建物や文化など懐古的な話が多くなってしまいましたが、今回は劇場の話です。パリにはオペラ座をはじめとして、今でも現役の古い劇場がたくさん残っています。逆に現代的な新しいものは少なくて、昔のものを大切にして使っている、そういうところもパリのいいところなんだと思います。そして、2013年に100周年を迎えたのが、シャンゼリゼ劇場、Théâtre des Champs - Elysees
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シャンゼリゼという名前がついているけど、凱旋門からコンコルド広場に向かってのびている賑やかな大通りのシャンゼリゼ通りにあるわでけはなく、そこから一本脇にそれた高級ブティックが軒を連ねる閑静なモンテーニュ通りに入って、セーヌ川がすぐそこに見えるところに位置しています。最近はオペラや音楽のほうに力をいれているような感じがしていて、コンテンポラリーダンス好きな私にとってはあまりなじみのない劇場です。たしか、最後に観たのは、ブランカ・リが明和電気とコラボレーションした「Robot!」。登場するロボットたちが全部かわいすぎでした。
2006年に公開された映画「モンテーニュ通りのカフェ」では、このシャンゼリゼ劇場の目の前のカフェに、劇場へ行き来するピアニストや女優などの人間模様が描かれていて、劇場まわりの雰囲気が味わえます。
[youtube=https://www.youtube.com/watch?v=hAF5RGL-VeA]
この劇場は、Gabriel Astrucガブリエル・アストゥリュク自身が莫大な資金を出して1913年に建設されました。ガブリエルは、1897年に音楽関連の出版社を創設。その後は、フランス国内のさまざまな劇場でコンサートやミュージカルを興行していた、舞台芸術のオーガナイザーとして活躍した人物。ガブリエルは、当時、舞台芸術界でとても影響力のあった人だったみたいですが、新しく建てたシャンゼリゼ劇場への投資によって、劇場が完成したその年に破産してしまい、その後は力を失ってしまったのだそう。全財産を投げ打ってまでガブリエルが建てたかった渾身の劇場が、一世紀を経た現在もパリの人たちに愛される劇場として残っていることが、とても感慨深いです。
1909年には、モダン・バレエの礎を築いた伝説のロシアのバレエ団、Ballets Russesバレエ・リュスを創設したセルゲイ・ディアギレフと出会い、パリでの初公演をシャトレ座で成功させました。そしてシャンゼリゼ劇場が1913年の5月に開館となりますが、そのこけら落としにもバレエ・リュスが選ばれました。プリンシパルダンサーだったニジンスキーが振付けを担当し、ストラヴィンスキー作曲の「Le sacre du printemps(春の祭典)」を発表します。
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初演当時の衣裳で再演されたときの写真。
[youtube=https://www.youtube.com/watch?v=BryIQ9QpXwI]
100年前の初演では、従来のバレエとあまりにも違い、その賛否両論で観客同士が殴り合ったり、野次で大騒ぎになった歴史に残る事件になりました。私は、クラシックバレエをほとんど観たことがなく、白鳥の湖やくるみ割り人形、って名前や音楽は知ってるけど、どんなストーリーでどんな振付なのか全然知りません。でも、ニジンスキーが振付した「春の祭典」は、クラシックバレエから想像できる、豪華な衣装で、優雅で繊細な美しさのイメージにほど遠いのが私にも分かります。
この100周年を記念して、シャンゼリゼ劇場では、3人の振付家によるそれぞれの「春の祭典」が上演されてました。まずはニジンスキーのバージョンの再演で、そのときの様子の映像がありました。また、ドイツの振付家、サシャ・ワルツも、100周年を祝して、新作「春の祭典」を発表。両方とも劇場に観に行けばよかったとすごく後悔。次の機会には絶対行きたいです。
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唯一観に行けたのは、ピナ・バウシュの振り付けによるヴッパタール舞踊団の公演。日本でも何度か上演されているし、ヴィム・ヴェンダースのドキュメンタリー映画でも登場している有名な作品です。

[youtube=https://www.youtube.com/watch?v=J4qm1wyzHwI]

席で待っているといきなり舞台には、土を目一杯詰め込んだ大きな荷車が運ばれてきました。どしん、どしんと、舞台に土が敷き詰められていき、二階席の舞台に張り出したバルコニーの席だったので、土の香りがほんわりとしてきて、それを身体に吸い込んで、シャンゼリゼ劇場に溶け込んだ気分で観てました。

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劇場の話に戻りますが、この建物は、オーギュスト・ペレ建築のコンクリートと大理石の劇場です。ペレについては以前のブログでも触れているので読んでみてください。→http://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/585
クラシックとアール・デコの混ざった内装で、フランス人画家3人がインテリアを担当。公演が終わったあと、館内を探検してみました。正面入り口からは、バレエやオペラなどが行われる写真にあるような大ホール。右のほうにもう一つ入り口があって、そこでは、演劇のホール、コメディ・デ・シャンゼリゼになっているのですが、まだ行ったことがありません。

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外壁は真っ白で、20世紀を代表するフランスの彫刻家アントワーヌ・ブールデルによるファサードで飾られてます。
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年末に、パレ・ド・イエナで行われていた、オーギュスト・ペレ展で展示されていた設計図の一部。
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携帯のパノラマアプリで撮ってみました。雰囲気伝わりますか?
豪華絢爛なオペラ座までとはいきませんが、螺旋階段や照明、劇場内の色使いもかわいらしく、見所いっぱいでした。公演が行われていない日は、見学ツアーも開催されているみたいです。
他の劇場と違って、安いチケットがあまりないので、チェックするのを忘れてしまいがちなのですが、来シーズンの予定もすでに発表されたようなので、早速調べてみようと思います!

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2014年4月30日水曜日

パリなのにアフリカ!Boboが集まる噂のゲットー・ミュージアムに潜入 LE COMPTOIR GÉNÉRAL

サマータイムに入ってからどんどん日がのびて、夜の9時になってもまだ明るく、もう夏が近づいてきてるはずだと思ってサンマルタン運河沿いに遊びに来ても、最近は毎日のように、雨が降ったりやんだり、夕立だったりで天候が不安定。そんなときにぴったりな面白い場所があります。

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運河を歩いてると、あやしい路地に誘われてふらりとたどり着いたところは、仲間内の秘密基地のように楽しい雰囲気を醸し出してる、Le Comptoir General。少し前から面白いところがあるってパリで話題になっていましたが、ついに潜入してみました。

入り口をどきどきしながらそろっと入ってみると、そこはさびれたホテルに迷い込んだよう。赤い絨毯が招きいれてくれ、壁にはアフリカの歴代独裁者たちがアンティークのシャンデリアに照らされてました。

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ここは、アフリカのゲットーの文化やアートを収集し、保存し、紹介している場所で、パリの真ん中でアフリカにいるような体験ができるとっても面白いゲットーミュージアム。ゲットーというのは、移民系の集合密集住居地区のこと。特にフランスはアフリカからの移民がとても多いです。

この場所の創設者であり友人同士のEtienne Tron と Aurélien Laffonは、子どもの頃からパリのジプシーに囲まれた地域で過ごした幼馴染で、アフリカの音楽や文化も身近にあるのが当たり前に育ったパリジャン。DJ,音楽プロデューサーとして活動しているエティエンヌとアートコレクターであるオレリアンは、2010年から二人で活動するようになり、レコードレーベルを立ち上げ、アフリカのクラブミュージックのコンピレーションアルバムをリリースし、そしてル・コントワー・ジェネラルも創立した。注目されることが少なかったり、触れる機会があまりない、アフリカの素晴らしい文化的活動のディレクションをし、発表の場を設けたり、ビジネスに結びつけるようなサポートする非営利組織として機能しています。そして、平日は、環境問題に取り組む企業や団体に場所の貸し出しも行っています。


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この室内の設備はすべて、環境への負荷を軽減することを一番に考えられています。オーガニックのものを使い、雨水を回収しそれを利用、廃材を再利用したり。つるが巻き付いた柱は、木が生えてるみたいで、広場は森に来たみたい。たくさんのヴィンテージのシックでカラフルなソファーと、使い古された学校のテーブルと机など、組み合わせはごちゃまぜだけど、無造作に置かれてるような古い家具たちもそこにいる人たちも全部合わせて、異国な雰囲気なのに居心地いい空間に仕上がってました。


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とにかく、なんでもあって、カフェでアフリカやアジアの料理を楽しんだり飲んだりおしゃべりしてくつろいだりする人たちが大半だったけど、図書館もあれば、ヴィンテージショップもあるし、アフリカンなヘアスタイルを体験できるバーバーもあれば、

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ステージもあり。このときは赤ちゃんたちが走り回ってたけど、ライブも企画されたり、映画の無料上映会もあります。

いろんなイベントの予定はウェブページで確認してみてください!

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中庭は、緑いっぱいで覆われていている喫煙スペース。室内とは打って変わって、とっても静か。

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「魔女の部屋」と題した、アフリカの古くから伝わる魔術をテーマにしたアートの展示スペースで、陰気でカオスなオブジェの寄せ集めが、妙にこの空間とぴったりでデコレーションになってました。

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私が一番心を打たれたところは、日曜日の午後開催されてる、ちびっ子教室。とってもファンキーなお姉さんたちが、子どもたちに読み聞かせしたり、ゲームして遊んでくれたり、ワークショップしたりと、とてもとても素敵な雰囲気で楽しそう。

歩いて見てるだけでも楽しいけど、イベントのときにまた来たいです!

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LE COMPTOIR GÉNÉRAL
80 quai de Jemmapes
Paris
11h00-01h00
たまにお休みのときがあるので、ウェブページで確認してください!http://www.lecomptoirgeneral.com/en

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2014年4月26日土曜日

ル・コルビュジェが生涯を過ごしたアトリエとアパート

去年の秋にフランスに唯一あるアルヴァ・アアルト建築の、パリ郊外に建っているギャラリストのルイ・カレの邸宅を見学しました。(そのことはブログに詳しく書いてます→https://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/1101
カレは、ル・コルビュジェに邸宅の設計を頼もうと始めは考えていたけど、コンクリートを好まなかったカレは、代わりに北欧の建築家アアルトに手紙を書いた、という話を聞きました。コルビュジェが設計して建てたことで、二人が移り住み、そして出会うことになった、Molitorビル(通称24N.C)のアパートのことが気になったので訪れてみました。
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そのアパートは、パリの高級住宅街といわれる16区の外れにあります。とっても静かなところで、あまり人通りも多くないのですが、広大なブローニュの森に囲まれて、全仏オープンの会場でもあるスタッド・ローラン・ギャロス、サッカーチームのパリ・サン=ジェルマンのホームスタジアムのパーク・デ・プランス、プールやマラソンコースなどなど、あらゆるスポーツ施設が目と鼻の先。西と東に面しているちょっと変わった位置取りで、建築の歴史で最初のガラスで覆われている住居です。
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1931年にコルビュジェといとこのピエールは、不動産会社からこの地にアパートを建てる計画を依頼されますが、このプロジェクトに必要な資金も十分に集まらないままなのに、建設工事に入るよう命じられてしまいます。借り手の見つからない部屋がいくつかあったことで、何ヶ月も遅れ、なんとか1934年に完成。また、コルビュジェは不動産会社に交渉して、最上階の7、8階を買い取り、17年間住んでいたサンジェルマンの家から、妻のイヴォンヌと移り住んできました。その後、1965年に亡くなるまでずっとこのアパートで過ごしていたそうです。なんと、1935年にはその不動産会社は財政難のため破産してしまい、立ち退きを迫られたりと苦労の多かったようです。
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6階までエレベーターで上がっていき、狭い階段をのぼり、とっても細い廊下を通ってたどり着きます。左に行くと、大きなアーチを描いている、石の壁がむきだしになっているアトリエがあります。この場所、すごく見覚えがありました。数年前の森美術館で行われたコルビュジェ展で再現されてた場所でとても懐かしく思いました。普通、アーティストのアトリエは、常に同じ明るさであり、暗くならないように、北向き。でもここは、東と西の両側から光が入ってきます。そのため光を拡散させるために、ガラスブロックと、半透明のガラス使用。美術館で見たときは、こんな穴蔵で絵を描いていたのか、なんて思ってましたが、実際に来てみるととまるで違ってました。外はどんよりした曇り空で気分も沈みそうなのに、アトリエ内は照明も点けてないのに本当に明るくて、すがすがしい光が満ち満ちているのでとても気持ちがいいし、すごく広いわけでもないのに開放感あります。
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コルビュジェは、この場所で膨大な数の作品を生み出していました。午前中はアパートで絵を描いて、午後は建築事務所へ出かける毎日。事務所はセーヴ・バビロン駅のボン・マルシェのすぐ向かいにあったので、メトロ10番線で一本でつながりました。所々にこうやって当時の写真が飾ってあるので、この場所がどのように使われていたのか想像してみたり、私もメトロ10番線はよく利用する線なので、コルビュジェの生活を辿っているようでとっても面白かったです。
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アトリエの奥は書斎と寝室と物置になってます。ここも、まぶしいくらいの明るさ。でも、もぬけの殻で少しさみしいです。
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入り口を右に行くと、居間とダイニング、そしてその奥は寝室になってます。前に行ったカレ邸と違って、コルビュジェが住んでいたときをそのまま保存してるわけではなく、構造を見せているだけなので、人が住んでいた気配がしないのがさみしかったです。写真を頼りにするのみ。
入り口にあった、大きな壁のような扉で、仕切ることができて、お客さんがきたときなどは誘導してくれる役割。その大きな扉を開いたままにしておくと、アトリエも居間も光が充満してとっても明るくなります。
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キッチンの家具も多くはコルビュジェがデザインしたもの。 テーブルもコルビュジェデザイン。死亡解剖のテーブルからインスパイアされているものらしいです。テーブルから続いてくように、そこだけ色ガラスでくりぬかれてる窓があり、見学しに行った日には、ステンドグラスアーティストの素敵なおじいちゃんが色ガラスの色を合わせにやってきてました。木箱にはものすごいたくさんの色のサンプルが入ってました。
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入り口すぐにあった螺旋階段を上がって8階に行くと、ゲストルームになってました。
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地上階のエレベーターの前の壁には、コルビュジェのドローイングが飾ってありました。
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土曜日は予約なしで誰でも入ることができます。このビルの入り口にインターフォンがあって、呼び出せば開けてくれます。中にないって突き当たりにエレベーターがあるので、6階まであがってください。
ブローニュの森に遊びに来たときなどに、寄ってみてくださいー
l’appartement-atelier de Le Corbusier
24, rue Nungesser et Coli
75016 Paris
土曜日 10h - 13h / 13h30 - 17h

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2014年4月19日土曜日

舞台芸術界の鬼才ロバート・ウィルソンの5時間にもおよぶ幻のオペラ『Einstein on the Beach』ワールドツアー

コンテンポラリーダンスを観るのが大好きで数年前から毎月、多いときは毎週観に行ってるのですが、最近は舞台芸術まで広げて、演劇やオペラもときどき観ることにしてます。先日、秋から冬にかけて毎年パリで開催される舞台芸術の祭典、Festival d'automne a paris の今季の公演がとうとうすべて終わってしまいました。今回フィーチャーされていたのは、舞台芸術界の鬼才と称され世界中からコアなファンを集めている、ロバート・ウィルソン。彼は、このFestival d'automne a parisが始まった40年前から計18回も招聘されている常連で、今季は3つも作品を引提げてパリへやってきました。そして同時期にルーブル美術館でアートワークの展示やパフォーマンスもあり、年末から年始にかけて、パリのあちこちの劇場や美術館ではロバート・ウィルソン祭のようでした。私は、これまで日にちが合わなかったり、チケットが完売してしまっていたりとなかなか観る機会がなかったのですが、2年越しの思いでやっと彼の手がけたオペラ『Einstein on the Beach』と、演劇『Peter Pan』を観ることができました。
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[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=1Jkr5TNcF9g#t=66]
『Einstein on the Beach』は、その題名のとおり物理学者のアルベルト・アインシュタインをテーマにし、これまでのオペラの伝統、舞台芸術の常識を壊したアヴァンギャルドな作品。1976年にフランスのアヴィニョン演劇祭で初演され、世界中をまわり大成功を収めました。2012年から始まった再演のワールドツアーでロンドンやニューヨークをめぐって、今年やってきたパリ公演はシャトレ劇場で上演されました。いつもより開演時間が早いにも関わらず、ものすごい人が詰めかけ、劇場はごった返し。まだ全員が着席していないのにすでに舞台に人が出てきていて、プロローグが始まりました。4幕と5つの間奏、そしてダンス2幕の構成で全部でなんと5時間弱。休憩も挟まないので、劇場の出入りが自由にでき、間奏に入るたびにたくさんの観客が立ったり戻ってきたりしてたのには本当にびっくりしました。
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想像する伝統的なオペラとはまるでかってが違いました。ストーリーやナレーションもないから、感情移入することも続きを期待したりすることもありません。それだけに、頭の思考回路を通さないで、舞台の壮大で幻想的な視覚的イメージと、時間の感覚を揺るがせ音に酔ってゆらゆらしてくるミニマルミュージックが全身に直接突き刺さってきました。舞台全部に共通しているのが、アインシュタインの見た目、ボサボサの髪をゆらしたおじいちゃん(=サスペンダーにハイウエストのズボン)という様相だけ。そして幕の前後の脈略はなく、それぞれの電車、裁判所、宇宙船のシーンに分かれ、アインシュタインの相対性理論、統一場理論を表現。裁判所は化学実験室のようだったし、上の写真のラストのシーンでは原子力爆弾をほのめかしてるように感じるところも。また、動きに人間身が感じられなく、機械みたいなゆっくりでぎこちなさと、50年代のアメリカのポスターのようなぎっとりしてのっぺりした顔つき。すべてのテクノロジーの発展が必ずしもよいことだけじゃなく、同様に破滅をもたらすこともあり、つかんでいたと思った幸せは虚構だったのかなと思って、寂しい気分になったりしました。
作曲家のフィリップ・グラスとコラボレーションした最初の作品で、音楽も秀逸。豪華なオーケストラの代わりに、シンセサイザーや古代楽器を使ったり、話言葉の台詞らしいものは一切ないし、歌詞も言葉ではなく数字や音節のみ。民族音楽や宗教音楽からインスピレーションを得ていて、少しずつ変化しながら何度も繰り返されていきます。その様子は宗教のよう。呪文を唱えていたり何かの儀式を執り行っているようにも感じてきて、観客はそれに魅せられた参列する巡礼者。5時間もその場にとどまらせていたのには、何かに取り憑かれたとしか思えません。

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それからもう一つは、パリ私立劇場で上演された、新作の『Peter Pan』。誰もが知ってる物語を、CocoRosieの音楽に乗せて、ロバート・ウィルソン流のちょっと毒のある不思議な、大人に向けたピーターパンの世界を繰り広げる。全員白塗りで不気味な形相はまるで死神のようだし、ピーターパンもやんちゃな少年ではなく影のある青年風で、子どもだけの国のネバーランドに、死の世界を見ているみたいでした。ベッドが羊になっていたり、乳母役の犬がメイド服を着ていたり、空を飛んでいくときの雲、タイガーリリーがいる崖など、重要なシーンの舞台美術が本当に素晴らしいのは言うまでもなく、それに加えてベルリンを拠点とする劇団Berliner Ensembleの団員たちの演技がとってもよかったです!ファンになってしまいました。ベルリンでもいつか彼らの舞台を観てみたいなと思います。
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ロバート・ウィルソンと、歌と音楽を担当したCocoRosie の二人。
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ロバート・ウィルソンは、1941年アメリカのテキサス生まれ。大学でビジネスや建築を学ぶ。舞台については全く教育を受けていないと言ってます。1968年に、実験的なパフォーマンスカンパニー、the Byrd Hoffman School of Byrds を立ち上げ、彼らと舞台作品を作っていきます。公演時間が非常に長いことが彼の作品の特徴で、7日間山の頂上で演じられたり、84年のロサンゼルスオリンピックのために計画されていた『the CIVIL warS』は12時間だった。結局予算の関係ですべて中止になってしまったという逸話が表してるように、とにかく尋常じゃないスケールの作品が多い。
[vimeo=http://vimeo.com/81692749]
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それから舞台の他にも、アート作品も創っていて、1993年のベネチアビエンナーレでは彫刻作品で金獅子賞を受賞してます。そんな彼がルーブル美術館で展示したのは、『Living Rooms』というインスタレーション。ニューヨークから2時間のところに、ロバート・ウィルソンのアートコレクションや、作品アーカイブを収蔵しているThe Watermill Centerという場所があり、そこはアーティストインレジデンスとなっていて、若手のパフォーミングアーティストが毎年夏に招かれている。アートに囲まれた毎日の生活の中で、それらが常にインスピレーションソースとなっている、そんな場所をイメージしている。また、別の場所では、レディ・ガガが絵画の中の女性に扮した、ポートレートのビデオアート作品も展示されてました。
実は6月にもロバート・ウィルソンのオペラ座での公演が待っています。私の中でダンスではアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが一番ですが、舞台では今のところロバート・ウィルソンが一番。ぜひぜひ機会があったら観てみてください!
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2014年4月12日土曜日

100年前にタイムスリップ。パリの世界一美しい骨格標本の博物館。古生物比較解剖学展示館 

毎週デッサン教室に通っているのですが、駅から歩くときに酸性雨で溶けた人の像が埋め込まれた古いレンガ作りの建物を横目で見てました。そのガラス窓からは怪しげな光と気味の悪い煙が立ち込めていて、この何かでそうな雰囲気のする面白そうなところは何だろうと気になって、去年の夏に初めて訪れました。今ではその魅力にすっかりはまり、パリで一番のお気に入りの特別な場所になってしまったのは、650もの骨の標本が集められて展示されている古生物・比較解剖学展示館。これまでにもパリでいろんな美術館や博物館、劇場などなど行ってきましたが、この博物館ほど衝撃を受けたところはありません!この博物館は、パリの植物園内にある、国立自然史博物館の一部なのですが、広い敷地にいあるもう一つの博物館の動物や魚の剥製が展示されている進化大展示館については、去年ブログでも紹介しましたので詳しくはこちら。http://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/148
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1900年のパリ万国博覧会に向けて1898年に開館した歴史のある建物で、そこに足を一歩踏み入れた瞬間、100年前にタイムスリップしたみたいです!!進化大展示館では、剥製の動物たちがライオンキングみたいに大行進していましたが、ここでは皮をはいだだけの筋肉の人体模型が先頭になって、ホネホネになった動物たちを率いているように見えます。でもなんだか偉そうにしてて、おこがましいというか、とてもヨーロッパ的な気がしてしまいます。万博のために作ったところなので、当時と展示の様子が同じかどうかは分かりませんが、フランスの力を見せる場所だった、ということかもしれません。
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そうはいっても、この趣のある博物館の内装におさめられたこれだけの数のホネたちの壮大な展示は圧巻。レンガの外壁に、内側は白い壁に鉄のアーチで輪郭線が描かれどこまでも続いていそうで目がくらむ。そのどこから来たのか分からないくらい深い底から、古めかしくよれた色の木のにのせられ少しくすんだ骨格標本の動物たちが次々に現れるその美しさに感動しました!
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壁沿いには、ガラスケースの棚に内蔵や脳のホルマリン浸けや、小動物や魚たちなどの標本が展示されてました。それになんといっても、展示の仕方が素晴らしいのです。電子化されてる部分もなく、特別なことをしてる訳ではないのですが、素敵なカリグラフィーの名前プレートが日に焼けていい色になっていたり、飴色になったつるつるの木の棚のガラスの向こうに無造作に並べられた変色した瓶など、人が作為的に作りだすことができない、この博物館が過ごしてきた時代によって彩られた装飾に心奪われてしまいます。私は一日中いても飽きないと思います。
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ちびっこたちが熱心に見てたのは、赤ちゃんから大人になるまでの成長していく過程が展示される棚。人間の進化の様子も比べられるようになってます。私は赤ちゃんの骨の標本を初めてみました。赤ちゃんの全身の標本は作り物か人形なんじゃないかと見まがうほどで、始めは分からなくて驚きました。
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2階に上がってみると、54万年前に遡って、恐竜やマンモスなど、絶滅した哺乳類の化石が並んでいました。アールヌーボーの装飾がとっても素敵なバルコニー部分には、貝や魚の化石。手作りの解説のパネルがすごくいいです。いい具合に色褪せて、余計な部分を省き分かりやすくデザインされています。これを見るためにも一番上まで登る価値ありです。
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この植物園はとても広くて、大きな公園になっています。その中にはもちろん温室の植物園もあるし、前述の二つの博物館と、実はなんと動物園まであります。博物館の大進化展示室で動物や魚の剥製を見た後、この古生物展示室で骨や内臓の標本で見えない部分の謎を解決し、動物園で実際に生きて動いている様子まで観察できてしまうという、自然界の不思議に興味がある大人も子どもにも至れり尽くせりな場所です。古い建物がいつまでも残せるヨーロッパはずるいなぁと思います。
Galeries d'Anatomie comparée et de Paléontologie
2 rue Buffon
75005 Paris
10時〜17時 火曜日休館
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