ここ最近のブログでパリの1世紀前の建物や文化など懐古的な話が多くなってしまいましたが、今回は劇場の話です。パリにはオペラ座をはじめとして、今でも現役の古い劇場がたくさん残っています。逆に現代的な新しいものは少なくて、昔のものを大切にして使っている、そういうところもパリのいいところなんだと思います。そして、2013年に100周年を迎えたのが、シャンゼリゼ劇場、Théâtre des Champs - Elysees。
シャンゼリゼという名前がついているけど、凱旋門からコンコルド広場に向かってのびている賑やかな大通りのシャンゼリゼ通りにあるわでけはなく、そこから一本脇にそれた高級ブティックが軒を連ねる閑静なモンテーニュ通りに入って、セーヌ川がすぐそこに見えるところに位置しています。最近はオペラや音楽のほうに力をいれているような感じがしていて、コンテンポラリーダンス好きな私にとってはあまりなじみのない劇場です。たしか、最後に観たのは、ブランカ・リが明和電気とコラボレーションした「Robot!」。登場するロボットたちが全部かわいすぎでした。
2006年に公開された映画「モンテーニュ通りのカフェ」では、このシャンゼリゼ劇場の目の前のカフェに、劇場へ行き来するピアニストや女優などの人間模様が描かれていて、劇場まわりの雰囲気が味わえます。
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この劇場は、Gabriel Astrucガブリエル・アストゥリュク自身が莫大な資金を出して1913年に建設されました。ガブリエルは、1897年に音楽関連の出版社を創設。その後は、フランス国内のさまざまな劇場でコンサートやミュージカルを興行していた、舞台芸術のオーガナイザーとして活躍した人物。ガブリエルは、当時、舞台芸術界でとても影響力のあった人だったみたいですが、新しく建てたシャンゼリゼ劇場への投資によって、劇場が完成したその年に破産してしまい、その後は力を失ってしまったのだそう。全財産を投げ打ってまでガブリエルが建てたかった渾身の劇場が、一世紀を経た現在もパリの人たちに愛される劇場として残っていることが、とても感慨深いです。
1909年には、モダン・バレエの礎を築いた伝説のロシアのバレエ団、Ballets Russesバレエ・リュスを創設したセルゲイ・ディアギレフと出会い、パリでの初公演をシャトレ座で成功させました。そしてシャンゼリゼ劇場が1913年の5月に開館となりますが、そのこけら落としにもバレエ・リュスが選ばれました。プリンシパルダンサーだったニジンスキーが振付けを担当し、ストラヴィンスキー作曲の「Le sacre du printemps(春の祭典)」を発表します。
初演当時の衣裳で再演されたときの写真。
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100年前の初演では、従来のバレエとあまりにも違い、その賛否両論で観客同士が殴り合ったり、野次で大騒ぎになった歴史に残る事件になりました。私は、クラシックバレエをほとんど観たことがなく、白鳥の湖やくるみ割り人形、って名前や音楽は知ってるけど、どんなストーリーでどんな振付なのか全然知りません。でも、ニジンスキーが振付した「春の祭典」は、クラシックバレエから想像できる、豪華な衣装で、優雅で繊細な美しさのイメージにほど遠いのが私にも分かります。
この100周年を記念して、シャンゼリゼ劇場では、3人の振付家によるそれぞれの「春の祭典」が上演されてました。まずはニジンスキーのバージョンの再演で、そのときの様子の映像がありました。また、ドイツの振付家、サシャ・ワルツも、100周年を祝して、新作「春の祭典」を発表。両方とも劇場に観に行けばよかったとすごく後悔。次の機会には絶対行きたいです。
唯一観に行けたのは、ピナ・バウシュの振り付けによるヴッパタール舞踊団の公演。日本でも何度か上演されているし、ヴィム・ヴェンダースのドキュメンタリー映画でも登場している有名な作品です。
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席で待っているといきなり舞台には、土を目一杯詰め込んだ大きな荷車が運ばれてきました。どしん、どしんと、舞台に土が敷き詰められていき、二階席の舞台に張り出したバルコニーの席だったので、土の香りがほんわりとしてきて、それを身体に吸い込んで、シャンゼリゼ劇場に溶け込んだ気分で観てました。
劇場の話に戻りますが、この建物は、オーギュスト・ペレ建築のコンクリートと大理石の劇場です。ペレについては以前のブログでも触れているので読んでみてください。→http://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/585
クラシックとアール・デコの混ざった内装で、フランス人画家3人がインテリアを担当。公演が終わったあと、館内を探検してみました。正面入り口からは、バレエやオペラなどが行われる写真にあるような大ホール。右のほうにもう一つ入り口があって、そこでは、演劇のホール、コメディ・デ・シャンゼリゼになっているのですが、まだ行ったことがありません。
外壁は真っ白で、20世紀を代表するフランスの彫刻家アントワーヌ・ブールデルによるファサードで飾られてます。
年末に、パレ・ド・イエナで行われていた、オーギュスト・ペレ展で展示されていた設計図の一部。
携帯のパノラマアプリで撮ってみました。雰囲気伝わりますか?
豪華絢爛なオペラ座までとはいきませんが、螺旋階段や照明、劇場内の色使いもかわいらしく、見所いっぱいでした。公演が行われていない日は、見学ツアーも開催されているみたいです。
他の劇場と違って、安いチケットがあまりないので、チェックするのを忘れてしまいがちなのですが、来シーズンの予定もすでに発表されたようなので、早速調べてみようと思います!
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