2014年1月24日金曜日

今シーズン一番印象に残った、強いメッセージ性のあるショー。Umit Benan 14AW パリメンズコレクション

昨年2月にTrussardiトラサルディのデザイナーを退任したUmit Benan ウミット・ベナン。ミラノのアトリエで自身のブランドUmit Benanに専念し、2014SSコレクションまではミラノで発表していましたが、今回初めてのパリコレクション。
映画に興味があり、監督になりたかったウミット・ベナンの、コレクションの作り上げ方が独特で面白い。そのシーズンごとに脚本家のように、詳細な部分まで具体的にストーリを作り上げて、それに合った登場人物を考える。彼の頭の中にはすでに舞台がしっかり出来上がった上で、服を作り始める。人物を舞台で表現するために服がある、というぐあいで、服を宣伝するためのショーではない。
今回のその人物とは、Jackie Robinsonジャッキー・ロビンソン。1947年、アメリカのメジャーリーグで初めてアフリカ系アメリカ人として出場し、有色人種にメジャーの道を開き、背番号42番は全球団の永久欠番にもなっている偉大な選手。去年公開されたアメリカで大ヒットした『42 〜世界を変えた男〜』は、彼の半生が描かれた映画。ウミット・ベナンは、このコレクションを"HOME RUN "と名付け、ジャッキー・ロビンソンに捧げている。
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観客席とグラウンドの土が敷き詰められたランウェイの間には鉄のフェンスが設置され、そこは野球場の映画のセッティング。最初の方は、顔を大きなグローブで顔を覆ってマスクをしているように顔を隠しながら歩く、黒人のキャストたち。フェンスはまるで牢屋の鉄格子のよう。
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ウミット・ベナンは、トルコ人の両親のもとドイツで生まれ、イスタンブールで育った。学生時代はスイスやアメリカで過ごし、そのとき経験した文化の多様性はコレクションにも反映されてる。ジャッキー・ロビンソンは、有色人種の自由のために戦った英雄であり、そしてその振る舞いはとても紳士的であったと言われています。アイデンティティ、自由、エレガンスはベナンが常に掲げているテーマでもあり、次の場面ではグローブをはずし、プライドと喜びを取り戻した幸福に満ち溢れている様子。
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最近あまり見かけない、とても強いメッセージの込められたコレクションであるけど、服において奇抜なデザインに走ることはなく、生地の工場を経営していた父親からの影響を受け、イタリアのテーラリングの高い技術にスポーティな要素を加えて上品に作り上げられてる。ファッションのトレンドをおいかけて行くことには興味もなく、昔の服をだたリバイバルさせてるわけでもない。現代に生きる彼の想いとイマジネーション練り上げられた新しい紳士服。
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フィナーレでは、ベナン自身が、“NO TO RACISM"と大きく印刷された紙を広げて走ってきました。
人種差別問題は、昔の話では全然ない。今回、このコレクションをフランス、パリで行ったのはただパリへ進出したかった、という理由かもしれないけど、実は今のフランス、 最近人種差別が問題になってきている。サルコジ元大統領の移民排除の政策と発言に始まり、つい最近では黒人女性のクリスチャーヌ・トビラ法務大臣が標的になりバッシングを受けている。トビラ大臣は同姓婚反対デモに参加していた11歳の女の子から「雌ザル」と侮辱されたり、極右雑誌でひどい扱いをされたり、しかもそのことをメディアが口をにごしなかなか批判の報道しなかった、というのは大きな話題となっていました。ベナンはそういった状況を知っていてあえてパリでこのテーマを掲げての発表となったのかは分からないけど、私はここでは外国人だし人ごとでもない問題。それもあってとても強く印象に残ったコレクションでした。
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 Facebook作りました。パリの生活、いろいろ載せてます。

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