今年の9月末、三年の改装期間を経て、Le Palais Galliera(パリ市立モード美術館)がオープンしました!館長のOlivier Saillard氏は、2011年にMusée Bourdelle (ブルーデル美術館)でマダム グレ展、2012年にはブログでも紹介した、les Docks(ドックス)のクリストバル・バレンシアガ、コム デ ギャルソン展、そして最近では、パリ市庁舎でのオート・クチュール展などを手がけていました。美術館から出張して各地で面白いモードの展覧会が行われていたので、待ちに待ったオープンというほどでもないかもしれないです。
現在行われているAlaïa展は、初期から現在までの70点にもおよぶドレスが集まっていました!
© Patrick Demarchelier
Azdine Alaïa(アズディン アライア)は、チュニジアで生まれました。幼い頃から、知り合いのフランス人マダムPineauの家で、たくさんの画集やモード雑誌に読みふけり、ディオールやバレンシアガのドレスに心を奪われていきます。芸術家としての才能を認められて、美術学校へ入学。彫刻を学ぶ傍ら、姉から裁縫を教わり、ドレス作りに明け暮れる日々を過ごす。そういえば、前に紹介したChana Orloff(シャナ・オルロフ)は、クチュリエとしてパリへやってきて彫刻家になった女性でした。逆のパターンですが、彫刻とクチュールがつながっていておもしろい!
50年代の終わり、エルメスのディスプレイデザインを手がける、装飾ディレクターのLeila Menchari(レイラ・マンシャリ)によってパリへ行く夢を実現!ギ ラロッシュのアトリエで2年間修行した後、64年に最初の自分のアトリエを開きます。彼の小さなアパートのアトリエには毎日、フランスの大女優Arletty をはじめとして、セレブたちが集まって来るようになり、そこには、デビューした頃のNaomi Campbell や、Stéphanie Seymourの姿も。
そして、1985年にはフランス政府から、ベスト・デザイナーと、ベスト・コレクションの2つを受賞する快挙!!少し見にくいですが、すぐ上の写真の真ん中のフードのドレスは、授賞式のときにGrace Jonesが着てたものです。
1990年代から、ファッションウィークに合わせたコレクションを発表することをやめ、自分のペースで発表しながら、パリ市庁舎からほど近い秘密のアトリエで、クライアントや親しい人たちのためにドレスを作り続けています。
第55回グラミー賞授賞式で、Rihannaリアーナが着用した真っ赤なドレス!
彫刻家の目を持っているアライアは、粘土や大理石で彫刻作品を作るのと同じように、布や革で服を形作っていく。「服は、女性の一部となっていないといけない」と語るアライアのドレスの特徴は、第二の皮膚と言われるように、ジャージー素材の布が身体のラインに自然に流れ、まるで着ていない、一体として感じられるとして、世界中の女性たちに愛されてる。
ア ライアのデザインには、アフリカ旅行で出会った自然や、ドレープやプリーツは、ギリシャ、ローマ、エジプトの彫刻からインスピレーションを受けたものも数多くあり ました。また、マドレーヌ・ヴィオネや、マダム・グレからの影響も受けていています。マダム・グレは彫刻家になりたかったクチュリエで、2011年の展示 のとき観た彼女のドレスも芸術作品のように美しかったのを憶えてます。モード美術館のSaillard館長は、グレの展示をするときから、アライアの展示をしようと考 えていたのではないかな、と思ってしまうほど、私の中でつながっていきます。
私が一番気になって魅入ってしまったのは、彼のドレスは、“脇”がない、というところ。服飾の学校ではたぶんどこでも、まず最初に、前と後ろ、そして脇、というように半身頃をさらに分割して意識するよう教えられます。アライアは、前から後ろまでつながって身体全体をみていました。そのアライアの視点を感じたときに、はっとさせられました。
また、現在のフランスのプレタポルテの会社では、ディレクター、デザイナーチームがいて、モデリストやパタンナー、縫製を担当するアトリエと完全に分業になってると思います。デザイン画を書いてモデリストに渡して、二次元の絵から想像して作り上げて行きます。実際に服を作れないデザイナーさんたちもいるそうです。それはこの年4回もつぎつぎとやってくるコレクションに対応するために、分業せざるを得ないと思います。そこから抜け出したアライア。彼は、自らハサミを持ち、インスピレーションからそのままその延長で布を手にして作り、パターンもひくという、数少ないクチュリエの1人です。
長くなってしまいましたが、まだ続きます。
最初訪れたときには行くのを忘れてしまったのですが、じつはここから向かいの、Musée d'Art Moderne(パリ市立近代美術館)の、マティスの部屋でもまだアライアの展示が続いてました。
これまでもアライアの作品は、96年には画家のJulian Schnabelと一緒に、98年には、ピカソ、バスキアなどと、2000年にはアンディー・ウォーホルと一緒に展示され、芸術家たちとのコラボレーションの展示もたくさんありました。そして今回は、マティスの壁画と、写真には見えませんが、ダニエル・ビュランの絵画と共に展示されてます。アートとモードは時に違う側面を持つものだけど、フォームやボリュームも完璧なまでに探し続けるクリエーションにおいては同じ。
この建物は19世紀に建てられたもので、1977年からモード美術館としての役割を担ってます。パリに来たばかりの頃この美術館には一度足を運んだことがあるのですが、そのときの館内は薄暗くてご ちゃごちゃして、古い美術館だなぁ、っていう程度の印象でした。改装後は、外観などそこまで大きくは変わっていませんが、展示スペースが広くなったように感 じ、とても開放感があってよく見えるようになり、壁の色も元のオリジナルのものに修復したようで、とっても素敵な空間になってましたよ!
展示は2014年1月26日までです。パリへ来るときはぜひ!私も、また必ず行きます!!
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