数ヶ月前に、日本の文楽を学んで作品を作った、オランダのマリオネット集団、ULRIKE の公演を観てきたという記事を書きました。そのときから文楽にすっごく興味がわいてきたのに、海外ではなかなか文楽に触れる機会がなくて残念だなぁと思っていたのですが、私のお気に入りの劇場、パリ市立劇場の今年度の公演予定の説明会のときに、日本から文楽がやってくる!ということを聞いてからずっと楽しみにしていた、「杉本文楽 曾根崎心中付り観音廻り」を観に行ってきました!!
© Sugimoto Studio/ Courtesy of Odawara Art Foundation
この作品は、2011年8月に神奈川芸術劇場で初演されたもので、今年2013年9月から10月にかけて、マドリード、ローマを周り、最後には、毎年この時期に行われている、Festival D'Automne という秋の芸術祭の目玉としてパリにやってきました!(この芸術祭については以前の記事を参考)私は初日に観に行ったのですが、満席の大盛況で、最後も拍手喝采、パリの人たちも日本の文楽に魅了されてました!
過去に能舞台も手がけている、現代美術作家の杉本博司さんが、構成、演出、舞台美術を手がけていることでも話題となっていたこの舞台。斬新な解釈で創造されたこれまでにない文楽で、ヨーロッパ公演には、上の写真のように、束芋さんの映像も加わった新しいバージョンになってます。2年前のは観てないのですが、人が操る蝶々と映像の蝶々が行き来する背景で、ぽおっと浮かぶ人形のお初は、現実の世界か映像の世界か分からなくなってしまう不思議な体験でした。
© Sugimoto Studio/ Courtesy of Odawara Art Foundation
ストーリーは、遊女のお初とお客の徳兵衛はともに愛する関係でいるのに、姪と夫婦にさせて跡を継がせようと画策する叔父に反発して徳兵衛は勘当されてしまう。返すはずだった叔父からの結納金を友人の九平次にだまし取られ、逆に詐欺師呼ばわりされ、袋だたきにされた徳兵衛は、死んで名誉挽回するしかないと覚悟し、お初に会いに行く。
信仰のあついお初は、この世でかなわない恋をあの世で成就させようと心中し、その姿に共感した当時の若い男女に心中が流行したことで、この浄瑠璃は上演を禁止されて200年間眠ったまま。昭和に入ってやっと再演されるようになったようです。
杉本さんは、「古典の復活こそが最も現代的であるような演劇空間を試みてみたいと思った」と語ってるように、2008年に発見された初版本をもとに、現在の公演では割愛されてる「観音廻り」も復活させ、また3人で操る人形ではなく、1人で操る人形も復活させ、映画「Dolls」にも出演していた、桐竹勘十郎氏が一人遣いの人形のお初を演じてます。そして、エルメスがスカーフを提供した艶やかな人形の衣裳にも注目!
© Sugimoto Studio/ Courtesy of Odawara Art Foundation
この写真は、最後のフィナーレで杉本さんも登場。人間国宝、三味線の鶴澤 清治さん、人形遣いの吉田簑助さん、切場語りの豊竹嶋大夫さんと、人形浄瑠璃文楽座から豪華勢揃い。私は、日本の文楽を実際に観たのは初めてで、伝統的なものとの違いは分かりませんが、私のイメージしていた文楽からいい意味で外れて、ユーモアもあったり、場面構成など面白いところがいっぱいで、どんどん引き込まれていきました。文楽は、大夫、三味線、人形と役割があり、人形遣に目がいってしまいますが、特に印象に残ったのは、語りを担当する大夫でした。最初は、上手く聞き取れなかったので、字幕を読んでたりもしたのですが、だんだん耳が慣れてくると分かるようになりました。1人で全員を担当するときもあれば、数人で役をもっていたり、三味線を聴きながらの大夫の語りのリズムはクセになります。
今度は伝統的な文楽も観に行ってみたいです!!
杉本文楽が気になった方に朗報。来年3月から東京と大阪で凱旋公演が予定されてます!ぜひぜひ観に行ってみてください。私ももう一度観たい!!
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