最近ちょっとした記事を読んで驚いたのですが、フランスの小学校の最高学年のCM2(日本の小学5年生の年齢)のクラスでは、子どもの権利条約の日の11月20日にちなんで、Le Parlement des enfants、“子ども議会”という、民主主義を学ぶプログラムがあるようです。1994年から始まり、今年で20回目となるこの子ども会議というのは、これはどこの学校でも行われているような、ただ教科書で国会の仕組みや法律を学ぶ、というものではないのです。毎年全国から審査で選ばれた577校は、公民の授業時間を使ってクラスで1〜3つの法案を起草し、国会に発議することができるのです。ちなみに577校とういうのは、フランス国民議会の定員が577人からきてます。法案のテーマは毎年あるようですが、子どもの権利であったり、兄弟家族、環境問題、そういった、子どもたちも身の回りのこと。
集められた法案は担当議員や教育省などの審査会で4つに絞られ、その中から参加した全577校が1番よいと思う法案を投票で選出し、表彰されます。でもそれだけでは終わらなくて、選ばれた法案は実際の国会で審議され、これまでの20年間ですでに子ども議会で選ばれた4つの法案が通り、国の法律となっていました。例えば、2000年3月には、子どもたちの提案から、「児童虐待の行為を見つけ、防止するために、学校の役割をより強化する」法律が制定されました。
正直なところ、小学生の頃に子どもの権利なんて考えたことなかったし、国会なんて誰か大人がやってることで自分とは関係ないことだと感じてました。フランスの子どもたちは小学生の頃から政治に興味を持つようになっていくんだと、感心してしまいました。
この子ども議会を主催しているフランスの議会の一つ、Assemblée nationale (国民議会 )の議事堂見学ツアーに参加してきたときのことを書こうと思います。フランスは独立した二院制で、上院の元老院と、下院の国民議会があります。それぞれに議事堂がありますが、両方とも宮殿を使用してます。
国民議会は、ルイーズ・フランソワーズ・ド・ブルボンの邸宅のために1722年に建てられたブルボン宮殿です。フランス革命によって没収されてしまいますが、ルイ17世が王政復古を果たしブルボン朝が復活し、宮殿は子孫のコンデ公のもとに返ってきます。国民議会へその後売却され、7月革命の起こった1830年代建築家のジュール・ジョリーによって復元されました。
入り口に予約した時間に集合。自由見学とガイドツアーと両方あります。身分証明書の提出をして、持ち物検査を通過してからついに国会議事堂に入れました!面白かったところを選んでみようと思います。
最初に通されるのがこの、フランスの詩人ジャン・タルデューの詩からインスパイアされた、現代画家のピエール・アレシンスキーの作品で飾られたスペース。意外にも、宮殿の中には20世紀に入ってからは積極的に現代芸術を購入し、いたるところに展示されてます。ここが一番好きな場所です。
さっきの小さなスペースを過ぎると、宮殿で一番豪華きらきらした場所にたどり着きます。一番上の写真もこの場所です。ここは祝宴が催される場所で、1845年にルネサンスをイメージして作られました。ヴェルサイユ宮殿の鏡の回廊をもとにしているそうです。大きな窓からは、お庭が広がって眺めもいいです。隣に建てられている、国民議会の議長邸、L'hôtel de Lassayがこの部屋から繋がっています。
もう使われてないけど、古いエレベーターのある広い廊下もかっこよかったです。二階のプレスルームにつながる階段で、たくさんのジャーナリストたちが集まる人の行き来が一番多い場所。新聞や雑誌、ちょっとしたスナックが買えるキオスクもあります。
このホールは、議事堂で一番象徴的な場所。フランス革命から続く、宮殿の警備をしているフランス共和国親衛隊の楽隊によるセレモニーが午後の国会審議の前に毎回行われてます。天井画は、当時のオルレアン朝フランス国ルイ・フィリップが、フランスの画家オオラース・ヴェルネに描かせたもので、17年間かけて1830年に完成。平和と繁栄、北アフリカに進出していた、ルイ・フィリップのマニフェストが描かれてるみたいです。
この部屋は、議員さんたちがインタヴューを受ける場所。テレビなどでもよく流れる部屋。
中庭は、ブルボン宮殿の建てられた当時を維持しています。右側は、さっき登場した議長の邸宅、L'hôtel de Lassay。一番奥に見えるのは、外務省です。この中庭で、ジャーナリストや議員たちが座って話したりしてるところなんだそうです。
そしてこの真ん中にあるまん丸のモニュメントは、アメリカの芸術家ウォルター・デ・マリアの「La sphère des droits de l’homme(人権の球)」という作品。フランス革命200周年のお祝いに創られたもので、周りには1789年に採択された17条のフランス人権宣言が刻まれてます。
ドラクロアに描かれた壁にかこまれているこのホールは、シャンデリアやソファなどのインテリアも素敵でした。ここは、左派の議員たちの交流の場なのだそう。ちょっと面白いです。
そしてついにやってきたのが、国会のメインのドームになってる会議場。日本の国会議事堂の本会議場のようなところ。ここも、建築家のジュール・ド・ジョリーによって19世紀に改装され、この形になりました。
577名の議員の席が下のほうにあって、柱で囲まれてる上の段は観客席です。誰でも議会を見学することができるんです。
この部屋は個人的にとっても好きな場所でした。コンデ公が宮殿を取り戻したときには、ここはダイニングだったようです。天井はフランス人画家のフランソワ=ジョゼフ·ハイムが描いたもの。
その後、まだインターネットがない時代はメールも使えなかったので、ここで議員さんたちは手紙を受け取って読んだり、手紙を書いたりする部屋だったそう。この上の写真の、”ピアノ”と呼ばれている郵便受けがそれを物語ってます。議事堂内のネット環境が整ってからはあまり使われなくなってしまったようで、なんだかちょっとさみしいです。
ここは、議事堂にある、図書館。
前に、『パリの美しすぎる図書館ベスト5! 大学図書館から、修道院、ブルボン宮殿まで』で紹介したので、興味があったらぜひ図書館特集の記事も見てください→ http://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/2861
図書館は議員さんと研究者のみに限られて、一般の人たちは利用することはできませんが、オンラインでデジタルアーカイブを閲覧することは可能。70万の蔵書を誇り、ロベスピエールの憲法の草案や、ジャンヌダルクの裁判の資料なんかもあるみたいで、わくわくしてしまいます。
一通り見てきましたが、宮殿を議事堂として使用してるので、議員さんたちもいなかったし、議事堂に来た気があまりしなくて、歴史的な宮殿を見学してる気分ですごく楽しかったです!今度は、観客席に座って、審議中の白熱した様子も観に行ってみたいです。実は日本の国会議事堂を見学したことがないので、日本のも行ってみて比べてみたいです。
平日と土曜日に、1日数回の見学ツアーが企画されていて、無料で参加することができます。専用ウェブサイトから予約できます。意外と人気で予約がいっぱいなのですが、予約してなくても当日早めに行けば入れてもらえることも。ぜひぜひ素敵な宮殿に遊びに行ってみてください!!
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