先週の日曜日から、ヨーロッパはサマータイムになり、1時間早まりました。日本との時差も7時間。仕事が終わって外に出てみてもお昼みたいに明るくて、なんだか得した気分ですが、まだまだ肌寒いです。コートを着なくてもよくなる日を待ち望みながら、気持ちだけは春のうきうきした軽やかさでいっぱいです。
春先から夏のバカンスまでのパリの街ら、これでもかっていうくらいに、モードであふれた時期になりそうです。パリのあらゆる美術館で面白い展示がなされてるので、ぜひぜひ訪れてみてください。
その中でも見逃せないのは、パリ市モード美術館で行われている、去年125周年!を迎えたメゾン・ランバンの創始者、ジャンヌ・ランバンの偉大な功績を体系的に巡る大回顧展『JEANNE LANVIN』です。
1980年初頭、アトリエの屋根裏部屋の奥深くで、500体以上ものジャンヌ・ランバンの時代の作品が詰まったトランクが見つかりました。彼女が亡くなった1946年以降、すっかり忘れ去られてしまっていたものでした。それらを保存、アーカイブ化する目的で、メゾン・ランバンの文化遺産部門が発足。(現在は広報部門に集約されてます。)この流れの中、去年ついにメゾン創設125周年を迎え、パリ市モード美術館とメゾン・ランバンとのコラボレーションで、ジャンヌ・ランバンの大回顧展が開催されることになりました。現在も変わらず続いているクチュールメゾンの中でランバンが一番歴史が古いです。
パリ市モード美術館はブログでも何度も紹介していますが、2013年にアズディン・アライア展でリニューアルオープンを迎えて大成功を収め、モードの歴史を主軸にこれまでにも素晴らしい展示で世界中の人たちを魅了し続けている、ファッション好きには人気のスポット。今回の展覧会全体のディレクションは、ランバンのアーティスティック・ディレクターのアルベール・エルバスが担当し、手がける展覧会がいつも評判の高い才能あふれるサイヤール館長自身がキュレーションを担当した最高のコンビ。間違いなく面白いはずだと確信してずっと楽しみに待っていました。
資料としての学術的な要素だけではなく、現在のメゾンに携わっていて、その後の行方の舵を握っているエルバス氏のジャンヌ・ランバンへの称賛とリスペクト、 そして愛のあふれる内容となってました。
オープニングに駆けつけたのですが、会場はものすごくたくさんの人で溢れかえって大盛況でした!!
19世紀の歴史的な建物に相応しく、きらびやかで、艶やかなドレスやアクセサリーが、博物館のような様相のガラスのショーケースに飾られていました。この空間に入るだけでも至福のひと時でした。
皆さんよくご存知のランバンのロゴは、お母さんと娘がダンスをしている様子が描かれてるものです。
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これは、1924年にジャンヌの娘、マーガリット=マリー・ブランシュがまだ幼かった頃に舞踏会で2人が手をとりあって踊っている様子を撮った写真をもとに、当時売れっ子イラストレーターだった、ポール・イリブがデザインしたものです。1927年には、ジャンヌがマーガリットの30歳のお祝いに作った伝説的なアルページュという香水にも描かれ、現在までブランドのロゴとなっています。エルバス氏も“このロゴには、ブランドの精神が凝縮されている”と語っているように、展覧会も母の娘に対する愛を表現しているブランドの顔でもあるロゴにまつわるエピソードから始まりました。
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というのも、1889年に帽子デザイナーだったジャンヌが初めて自分のブティックを開きますが、娘のために作っていた子ども服が評判となり、1908年に子ども服ラインも展開します。1909年に本格的にレディースの服も始めますが、それに子ども服のほうが先立って始めていました。それに、婦人服を手がけるようになったのも、マーガリットの成長にともなってデザインが変化していったという必然のことだったのです。すべては最愛の娘のため。1911年にはウエディングドレスもデザインしますが、1917年に最初の結婚をする娘のことを見越してたんじゃないかなぁと思いました。
エルバス氏も、2008年からウエディングラインのコレクション・ブランシュ、そして2011年には、子ども服のランバン・プティを次々と展開してます。
そして、ジュエリーのようなビーズやスパンコールの刺繍されたドレスがキラキラ輝いて、館内が宝石箱のようでしたが、そうしたジャンヌのデザインのインスピレーションの源の秘密が明かされます。
メゾン・ランバンの、パリのマドレーヌにあるブティックの3階(日本式に4階)には、当時ジャンヌ・ランバンが過ごしていた、ユージニー・プリンツが内装を手がけた書斎が現在も大切に保存されています。普段は非公開ですが、歴史的建造物の日には、一般に限定公開されたこともありました。
ここには、ジャンヌが旅先で見つけてきたエキゾチックな布や伝統的な生地がガラスケースに入れられていたり、膨大な刺繍のサンプル帳、旅行日記、動物や花の本、顧客に披露したモデルのすべてのデッサンや水彩画が、シーズンごとに素敵な布で装丁されている300ものアルバムに収められています。ジャンヌにインスピレーションを与えていた、これらの刺繍の本やデザイン画実際のドレスと一緒に展示されているので必見です。
125年もの歴史があり、現在までも続いているメゾンで、これだけ素晴らしく保存のよい状態でデザイン画までも残されているのはランバン以外にないんじゃないでしょうか。ジャンヌ亡きあとの後継デザイナー、アントニオ・カスティーヨ、ジュール・フランソワ・クラエ、クロード・モンタナ、そして現在に続くエルバール・エルバスまでものすべてのクリエーションのデザイン画を保存することが伝統となったそうです。
また、ジャンヌは、ライフスタイル全般に目を向けていた、最初のファッションデザイナーでした。
1920年には、インテリア・デザイナーの、アルマン・アルベール・ラトーとコラボレーションして、ランバン・デコレーションという会社を作ります。ラグジュアリーな家具から壁紙までデザインしたり、パリの2区に今もあるドヌー劇場の内装も二人が手がけています。ランバンのブティックでもその当時のソファーやアームチェアが飾られているのでチェックしてみてください。また、ラトーが内装を手がけたジャンヌの住んでいたアパートの内装をそっくりそのまま装飾美術館に移築されてるので、こちらもぜひ見に行ってみてください。
ジャンヌ・ランバン彼女自身と、歴史と伝統を誇る世界のメゾン・ランバンの魅力にはまってしまうこと間違いなしのこの展示は、8月23日までです。装飾美術館と一緒に観に行くのがオススメ。ブティックを見に行くこともお忘れず。
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