2014年6月9日月曜日

グラン・パレに不思議な都市が出現!今年のMonumentaは、イリヤ&エミリア・カバコフ 

パリの美術館グラン・パレで2007年に始まった、13500平米もの広大なスペースを使って、世界中から選ばれた一人(一組)のアーティストが、その数週間限りの作品を展示するプロジェクト、Monumentaモニュメンタ。ブログでも、アニッシュ・カプーア、ダニエル・ビュレンの作品を紹介しました。
2011年、巨大なバルーンが埋め尽くすアニッシュ・カプーア http://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/12
2012年、カラフルな常夏のダニエル・ビュレン http://www.vogue.co.jp/blog/taco/archives/76

去年は残念ながらなかったのですが、今年の第6回目となる2014年は、ロシア出身のアーティスト、Ilya & Emilia Kavakov イリヤ、エミリア・カバコフが選ばれました。彼ら夫婦は、親日家であり、日本で何度も個展を開催し、2008年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している、日本とゆかりのある人たち。

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イリヤとエミリアは、「ユートピアの世界のアイデアを考えていくうちに、芸術は文化の中に大きな位置を占めており、私たちの考えかたや夢、行動や思考のありかたを変えることができると思うようになりました。生活のしかたを変えることができるのです。」と語っているように、 この展示では、インスタレーションとして見せるだけではなく、会場に訪れた人たちの経験として残るような仕掛けがされています。現実の生活のリズムをゆるめ、心の動き、感覚や思い出に耳を傾け、毎日の生活から未来についても思考をめぐらせる契機となるように、二人の願いが込められた展示になってます。

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今回、彼らがグラン・パレの巨大なガラスのドームで下で繰り広げるのは、不思議な都市。ルネサンスや科学技術、近代からインスピレーションを得て、会場全体をある街にみたてて、8つの場所で構成されています。実際にそこを歩いていると、街の全体像がつかめなくて、自分がどこにいるか分からなくてぐるぐる迷いこんでいくのが楽しかったです。
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まずエントランスから導かれるのが、巨大なカラフルなドーム!ロシアの音楽家、アレクサンドル・スクリャーピンの創造した、色光ピアノから着想を得ています。この色光ピアノというのは、音に対して色を感じとる共感覚を持っていたアレクサンドルは、その色聴を元にして鍵盤に色相環を当てはめて考えだしたピアノ。20世紀前半に有名になったもの。
写真は、緑と紫ですが、赤、青、オレンジ、と様々に変化してました。期間中はこの場所で、音楽のライブも行われるイベントも催されているようです!

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それから、街には「からの美術館」「マナ」「宇宙エネルギーの中心」「どうやったら天使に会える?」「扉」といった5つの建物が見えてきて建物の中へ入ってみます。例えば、この「からの美術館」には、何にも飾られていないでスポットライトの光だけの空間。一昔前の古ぼけた美術館のようでした。
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「どうやったら天使に会える?」の建物内の様子。天使に会うための方法を提示してあるのですが、それが現実離れした発想でちょっと可笑しいと思う反面、その人間の盲目的に努力して行き過ぎた成りの果てが、実はすべて虚構だったという、とてもやるせない現実を突きつけられた思いです。科学の進歩がときに災いを引き起こすかもしれないという暗示を込めた作品。。

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奥には、「白いチャペル」と「暗がりのチャペル」が対照的に建てられてます。白いチャペルには、真っ白のキャンバスが敷き詰められ、所々に絵画が埋め込まれた広いスペース、そして、暗がりのチャペルは、写真のように、大きな絵画のコラージュがかけられてました。

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イリヤ・カバコフは、1933年、旧ソ連、現在ウクライナのドニプロペトロフスクに生まれます。美術学校へ進み、モスクワへ移住し、卒業後は絵本の挿絵を描いて生計を立てながら、冷戦下の抑圧された環境の中、公には発表できない作品をアトリエだけで作り続けていました。その後ソビエト崩壊とあいまって、彼の作品は80年代以降脚光を浴びるようになり、世界中で作品をしています。夫人のエミリアは、同郷のドニプロペトロフスクに1945年に生まれます。モスクワの音楽学校でクラシックピアノの学位を取得し、73年にイスラエルに移住し、75年からニューヨークでキュレーターとして活動しています。二人は、1989年から共同制作をはじめ、現在ニューヨークを活動拠点としています。

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生き急いでまわりが見えていないことに気づかせてくれた、体感的な大規模な展示空間でした!

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Monumenta 2014 : Ilya et Emilia KabakovL'Etrange Cité
6月22日まで
Grand Palais, Nef

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