パリの装飾美術館では毎年、一人のデザイナーを取り上げて大規模な展覧会を行ってますが、今年はドリス・ヴァン・ノッテンの30年間の歩みを辿る、コレクションのデザインのインスピレーションソースに焦点を当てた『inspirations』展が3月からパリの装飾美術館で始まりました!!
会社でもいろんな人から話を聞いていたので、気になって行ってきました。
装飾美術館は、午後3-4時くらいからは列ができるほど人気なスポットなので、できるだけ早めの時間に行くのがおすすめ。並ばずに入れたのですが、それでも週末の館内はやっぱり人でいっぱい。なかなか前に進めなくて、時間がかかってしまいました。
今回の展示の特徴は、ドリス・ヴァン・ノッテンの初期から現在までのクリエーションをただ振り返るような、コレクションの作品が歴代ごとに並んでいるというものではありません。
ドリスのそれぞれのコレクションの膨大で様々なインスピレーションソースを紹介することで、クリエーションのプロセスの秘密を明かしてくれるとってもとっても刺激される展示でした!!
ドリス・ヴァン・ノッテンは、両親が布地の小売業を営んでいたことから、テキスタイルの世界に導かれ、1981-1986年にアントワープ王立アカデミーでファッションデザインを学ぶ。1986年には、同時期に発表したベルギー出身の他の若いデザイナーたち共に、“アントワープ6”と呼ばれるようになるファーストコレクションをロンドンで発表し、世界に衝撃を与えた。祖父は二人ともアートコレクターだったようで、小さな頃からずっとアートに囲まれて育ち、それが当たり前のようにコレクションにも影響している。
彼のインスピレーションソースは多岐に渡っていて、イヴ・クライン、ダミアン・ハーストなどの作家の作品や、『時計仕掛けのオレンジ』や『ピアノレッスン』などの映画や写真、演劇だったり、それらがクリエーションを豊かに彩っている。個人的にはドリスが衣裳を担当している、コンテンポラリーダンス『Rain』の映像の展示があったのがすごく嬉しかったです!(余談になってしまいますが、このダンスの振付けをした同郷のアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルの公演ではよく衣裳を担当して、去年観た『Dramming』もそうだったのですが、二人のコラボレーションは楽しみにしているものの一つです。) 今回の展覧会は、ドリス・ヴァン・ノッテンの2014年春夏コレクションで、美術館が19世紀のテキスタイルの資料を提供したことから生まれたもので、美術館の所蔵している19世紀のスキャパレリやディオールから、80年代のサンローラン、山本寛斎などの作品も、テーマを強調するために展示されてました。
そして注目すべきところは、特定の色に強く影響されている点。マーク・ロスコの絵画の赤色だったり、ゲルハルト・リヒターの微妙な色彩だったり。2009年秋冬コレクションでは、ロンドンで観たとき消化しきれないほどのショックを受けたフランシス・ベーコンの絵画の色使いを服に落とし込んだ。服では敬遠されがちな色のニュアンスや、身体をデフォルメするベーコンの表現方法を、服に置き換えることで、服の概念を壊してみることを試みたコレクション。
そして、展示方法にもこだわっていて、ルネサンス時代に貴族や学者たちによって、彼らが収集した奇妙なお気に入りのものが分野を超えて陳列されていた「驚異の部屋」をイメージしている。こうやって服飾の展示で、絵画などの作品が大きく取り上げて展示されていることもあまり観たことがなかったけど、服が芸術作品によって囲まれることで、そこから生まれてきた様子が感じられてとても面白かったです。ドリスが「モードは私たちを取り囲んでいる世界へのリアクションであり、クリエーターとして自分なりの方法でそれに反応する」と言うように、様々な芸術であったり、エキゾチックな地方文化だったりが上限関係なく秩序なく入り乱れ混ざりあい、時代に影響されながら生まれてきたコレクションの秘密を垣間みてしまった気がします。
Exhibition Dries Van Noten, Inspirations, (c) Les Arts Décoratifs, Paris.
Photographer : Luc Boegly
8月31日まで開催されてます。
Les Arts Décoratifs – Mode et textile
107 rue de Rivoli
75001 Paris
11時〜18時 月曜休館
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