行ってきたのは少し前のことなのですが、最近モードの投稿が続いたので、少しはずして、建築の見学ツアーについて書こうと思います。
建築好きの友だちが誘ってくれて、パリの郊外にある、20世紀を代表するフィンランドの近代建築家の1人、アルヴァ・アアルトが1959年に建てたフランスに唯一現存する、Maison Louis Carré(ルイ・カレ邸)に今年の秋に行ってきました。アアルト建築は、映画「かもめ食堂」に登場して一躍有名になった、カフェ・アアルトのあるアカデミア書店、出世作となったパイミオのサナトリウム(療養所)、フィンランディアホールなどなどいろいろありますが、外国でもたくさん建築を残してると思っていたら、フランスではここだけみたいで意外でした。
ここは、コレクターでギャラリストのLouis Carré(ルイ・カレ)が、晩年に奥さんのオルガと一緒にパリから40km離れた場所でゆっくり過ごすために建てた、ギャラリー兼住宅。郊外へ行く列車RERのC線に30分くらい乗って、Saint-Quentin-en-Yvelinesで降りました。パリの郊外にある近代建築の邸宅といえば、このブログでも以前紹介した1931年に完成したコルビュジエのサヴォア邸を最初に思いだす人が多いかもしれません。カレ自身は、コルビュジエと34年にすでに出会っていて、パリ16区にあるコルビュジエのアパートに住み、彼の展覧会を開いていたほどの仲。だから最初は、コルビュジエに依頼しようと考えていたけど、コンクリートを好まなかったカレは、友人から噂を聞いていたアアルトに手紙を書くことにしたそう。
駅までは、ガイドさんが車で迎えにきてくれて、オーストラリアから来たという建築家の人と一緒に乗り込み、10分くらい田舎道を行くと木の生い茂った門に着きました。林で覆われて外からはぜんぜん分からない小道を過ぎると、ぱぁーっと明るく開けたところに白い建物が。この出会いの感じは、サヴォア邸と似てるのですが、サヴォア邸はふんぞり返るようにどでんと構えて、どちらかというとまわりから浮いてるように建ってるように見えるのに対して、カレ邸は、土地の傾斜に合わせた屋根や、少し離れて見ると、もう背景にとけ込んでしまってわからなくなってしまうくらいでした。
外から格子の間から覗いてたように、天井がこんな風にカーブになってました!ギャラリストのカレは、たくさんのコレクションをこの家に飾るため、美術館の壁のように真っ白にしてました。ここはエントランスなのですが、この壁にも当時は絵画が飾られていたようです。画家のアトリエやギャラリーでは、直射日光が入らない北向きが好まれるように、このギャラリーを兼ねてるエントランスも北向きでした。やわらかい光が入ってきます。
ガイドさんが、それぞれの部屋で解説をしてくれながら、みんなで進んでいきます。ここはリビング。
このカレ邸は、アアルトの二番目の奥さんである、建築家でありデザイナーのエリッサが現場を任され、長い時間ここで過ごしたようです。ちょっとだけ見えてる、赤のラグもエリッサのデザインしたもの。カレは、この家の作品としての価値に気遣い、以前住んでいたときの家具は一切持ち込まず、多くの家具や照明、テキスタイルは、この家のためにアアルト夫妻がデザインした特注のもので、その他は、アアルトと彼の仲間たちが立ち上げた家具メーカーのartekから選んでいます。インテリアにも興味があったカレの徹底した心意気に、胸うたれます。
ダイニング。 このつり下がってる照明が面白くて、壁にはここにも絵画が飾られていたので、テーブルと壁と両方に光が当たるように下向きと横向きにも穴があいてました。
カレの書斎。
カレの寝室。奥には、お風呂とサウナがあります。
カレの奥さん、オルガの部屋。カレは1977年に亡くなり、この家に15年ほどしか住んでいませんが、オルガはその後も25年間、2002年になくなるまでずっとここに住んでいました。だからなのか、人のぬくもりを感じさせる、とても温かい雰囲気のする場所です。大きな窓からは、森が目の前。それぞれの部屋には、直接お庭に出れるように出口がついてて、お庭もお家の一部みたいになって、外で出会ってコミュニケーションがとれるのが面白い。部屋は朝日が入るように南向き。
お庭に出てみると、斜面を等高線みたいに切った階段が下に続いていて、プールもあったのですが、まだきれいに整ってなくて見せられない状況。
この広いお庭では、マルセル・デュシャン、ジョアン・ミロのような世界的なアーティストたちから、フィンランドの大統領までも招かれ、パーティが開かれたり、演劇や演奏会なども行われてたなんて、素敵な暮らしぶりが目に浮かびます!
ぐるっと一周してくると分かるのですが、それぞれ、全く違う顔。ここはリビングの外壁。煙突もデザインしてあって、かわいかったです。
アアルトの北欧の自然と、カレのフランスのアートのライフスタイル、両方が混じり合った、カレが依頼主じゃなかったらできなかっただろうって思う、家でした。1996年には、フランスの歴史的建造物に登録され、2007年から一般公開されるようになりました。
私は、友だちが誘ってくれなかったら、知らなかった場所なのですが、あまり交通の便のいい場所ではないのに、見学の人たちもとぎれないほど、かなり人気のとこでした。建築の学生たちもたくさん来てて、芝生に座ってスケッチしてたり、写真をたくさん撮っていたり。ガイドさんに教えてもらったのですが、カール・ラガーフェルドもカレ邸で雑誌のヴィジュアルの撮影をしてます。
建築のことあまり知らない私の個人的な好みでは、サヴォア邸よりもずっとカレ邸のほうが好きです。住んでみたくなるようなうらやましくなってしまうようなところでした。建築に興味ある方はぜひぜひ訪れてみてください!!
見学に予約が必要です。土日の午後のみです。詳しくはこちらのサイトへhttp://www.maisonlouiscarre.fr
Facebookつくりました。載せられなかった写真などなどアップしてます。
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